終活を進める中で是非準備をしておいていただきたいものの一つが、遺言書です。終活はこれまでの人生を振り返り、その先の生活をより豊かに自分らしく過ごすための準備と言えます。そのために、財産の整理や相続問題をクリアにしておくことはとても大切なのです。
遺言書は自身で準備することも可能ですが、確実に法的に有効なものにするには様々なハードルがあります。また遺言書を作成するまでには、財産の洗い出しをしたり、誰に何を相続させるのかを検討する必要もあります。
ここまで入念な準備が必要な理由は、やはりお金というのは家族、親戚間においても争いの火種となる可能性をはらんでいるということに尽きます。

また、相続する財産の中に不動産があった場合、遺言書があることで相続登記の手続きがスムーズに進むというメリットもあります。
今回の記事では、遺言書の必要性と共に、相続登記を行う際のメリットについても考えていきたいと思います。

遺言書の作成は絶対に必要なもの?

例えば、万が一自身が亡くなった際に遺言書がなくても相続は行われます。そんな時には、法律で決められた割合によって遺産は平等に分けられることになります。家族や親族の仲が良く、相続人にあたる全員がその内容に異議を申し立てることなく相続が行われるのであれば、遺言書は必要ないと言えるでしょう。
しかし例えば、介護など老後の生活の面倒を見た、生前中に学費などで既に恩恵を受けている、など単純に平等に財産を分割することに納得できないなど、いざ遺産相続というお金に関する問題を目の前にすると、トラブルが発生する可能性があるのです。さまざまな感情が入り組むと、法律で単純に決められた割合では不満が発生する場合も少なくありません。
そんな時に遺言書が残されていれば、少なくとも家族間の争いやトラブルを抑止する効果が十分にあるのです。

また、法定相続人にあたる人以外にも遺産相続させたい、特定の財産を特定の人物に相続させたい場合なども必ず遺言書を作成する必要があります。

遺言とは、自身の死後に財産をどのようにしたいのかと思っていることを相続人等に伝える最後の意思表示です。遺言書を残すことでかえって不要なトラブルを引き起こすのではと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば相続人全員の合意が得られるのであれば、遺言書に従わずに自由に遺産分割をすることも可能です。相続人たちの意見がバラバラで、それぞれが自分の権利を主張した場合などに物を言うのが遺言書と言えます。

したがって、万が一の親族間のトラブルを想定して遺言書を残しておくことは、誰にとっても大切で必要な作業といえます。
さらに、遺言書を作成する前にその内容について家族や親族に事前に相談をしておけると尚安心です。死後に遺言書が発見され、不満が出ることを防ぐためです。遺言書はの加筆や修正は何度もできるので、思い立ったタイミングで万が一の備えとして準備しておけると安心なのです。

そして遺言書を作成する上で、とても大切なことはその遺言書に法的効力を持たせると言うことです。
きちんと有効性を持たせることで、遺言書を作成する意味も生まれ不要な争いを避けるための役割を果たすことになります。
法的効力を持つ遺言書を作成する場合には、さまざまなルールにのっとって作成する必要があります。
遺言書には大きく分けて3種類あります。

自筆証書遺言
自筆証書遺言はその名のとおり、自身で作成する遺言書のことです。書き方や用紙も自由に作成することができるので、思いついたらすぐに作成することも可能です。ただし、規定の条件を満たしていない場合、内容が無効となり法的な効力を持たない可能性もあります。手軽さと共にデメリットも大きいので、確実な相続のためにはリスクがあると言えます。
また2020年からは、法務局にて自筆証書遺言の保管制度が始まり、自宅保管をしており死後も遺言書が発見されない、という危険性を回避することができるようになりました。
・公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場で公証人立ち合いのもと作成されます。費用が発生しますが、自筆証書遺言とは異なり、条件を満たさず無効となる可能性は低く、確実な相続を行うためにはとても有効な遺言書と言えます。また、遺言書の保管場所も公証役場となるので、紛失や改ざんの心配もありません。
・秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言を混ぜ合わせたような特徴を持ちます。遺言書の存在を公にしたくない、誰にも内容を知られたくないという場合には、有効な方法です。作成した本人が遺言書を公証役場にもっていくことで、『自身で作成した遺言書である』ということを証明することができます。
しかしその内容を公証人がチェックすることはありません。そのため自筆証書遺言と同じく、内容の不備で無効になる可能性もありリスクが高い方法でもあります。

法的な効力を持たせることを前提して考えた場合、自身で作成する自筆証書遺言よりも、公証人が関与する公正証書遺言で作成することがおすすめです。公正証書遺言は費用が発生しますが、意味のある遺言書を作成するためには一番の近道と言えるでしょう。

遺言書があると登記をする際にメリットがある?

建物や土地などの不動産は所有者が変更する場合に、名義の変更が必要です。それは、遺産相続においても当てはまります。遺産相続は相続を開始すると共に被相続人から相続人に所有権が移ることになります。所有者が変わることになるので、その旨を登記を行う必要があります。 

 遺産相続により登記を行う際には、その状況の違いにより必要書類が変化します。
・法定相続分通りの相続登記
・遺産分割協議による相続登記
・遺言書の内容による相続登記
などが主な違いになります。

相続による名義変更の際には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍などが必要です。これは誰が法定相続人にあたるのかを確認、証明するための役割を果たします。
遺言書がない場合は、遺産相続の分割について、相続人全員が参加をした上で遺産分割協議を行い、話し合った内容を文書化した遺産分割協議書を作成することになります。
しかし遺言書が存在し、その内容に沿って遺産相続を行う場合には、既に相続する人が決まっているため、相続人の証明や遺産分割協議書なども不要となります。
ただし、残されていた遺言書が自宅などで保管されていた自筆証書遺言だった場合には、家庭裁判所で検認を受ける必要があります。
検認とは、遺言書を発見した時点で開封をせずに、家庭裁判所で開封を行う手続きのことを言います。
相続人が勝手に遺言書を開封をしてはいけない理由は、遺言書の真偽の確認と、遺言書の改竄などがされることを防ぐためです。遺言書の内容が勝手に書き換えられていたり、特定の相続人に有利な遺言書にすり替えられる可能性を無くし、亡くなった方の意思を尊重することを第一に考えられています。
また、遺言書の開封を行う際には、公平性の観点から家庭裁判所で相続人全員の立会いの中で行われます。ただし、家庭裁判所から相続人全員に通知がされますが、参加自体は相続人に委ねられています。

このように、登記が必要な財産の相続がある場合にも、遺言書の存在というのは非常に重要なものとなります。
遺産相続トラブルの回避のほか、残される家族の負担を減らすためにも遺言書の作成というのはとても大切な終活の活動の中のひとつと言えるでしょう。

まとめ

遺言書に不動産の相続について記載があった場合、原則その内容にそって相続登記が行われることが多いでしょう。その際に必要な書類は、遺産分割協議を行った際や、法定相続割合による相続登記の時に比べ少なくなります。
財産を相続する機会は、一般的にそう何度もあるものではありません。そのため、その手続きや必要書類の有無については、不慣れな方が大半でしょう。
登記申請などについて経験のない方は、専門家に相談することもおすすめです。

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