終活という言葉をテレビやインターネットなどで見かける機会も増え、その活動を取り入れる人も随分と増えてきました。終活は、死後のための準備をする活動と思われがちですが、それだけではなく、これからの人生をよりよく生きるために人生を振り返り、整理するという前向きな意味もあります。
死後のための準備と聞くと、考えたくない、口に出すと縁起が悪い気がすると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、終活とは決して後ろ向きなものではなく、ポジティブな活動なのです。
終活の活動の内容は、葬儀やお墓の要望、介護や終末医療について、そして財産の整理や遺産相続についてなど多岐に渡ります。今回の記事では、その中の遺言書について考えていきたいと思います。
遺言書にはルールというものはあるのでしょうか?たとえば遺言書に日付がなかった場合、その遺言書は有効なのでしょうか?
遺言書の必要性と共に、ルールについてもご紹介していきたいと思います。
遺言書の性質を知りましょう
終活を進めていくと、まず出てくるワードがエンディングノートというものかもしれません。
終活を始めてみようと思っても、人生を整理するというだけでは、必要ないと思ったものをどんどん捨ててしまいは思い出も一緒に無くなってしまう様に感じ、不安に思ったり寂しく感じるかもしれません。そんな時、ひとつの指針としてガイドラインとなるのが、「エンディングノート」かもしれません。エンディングノートに沿って少しずつ身辺整理ができると気持ちも前向きになったり、気分が軽くなり、その先の自身の人生を楽しもうと思えるきっかけとなるかもしれません。
しかしここで大切なのが、エンディングノートには法的な効力はないと言うことです。
エンディングノートに書かれていることは、あくまでもその人の希望や要望ということになります。それが、家族にとっては故人の気持ちを知るための大切な手がかりとなることも多いので、準備をしておけると安心なのです。
しかし、お金が絡む財産の相続のこととなるとエンディングノートでは役割は果たさないかもしれません。遺産相続というと、少額だとしてもどうしても家族や親族間で争いを生む可能性があります。そんな時に、法的効力のないエンディングノートだと、故人が考えていた様に遺産を分配することができない可能性が出てくるのです。
そのため、遺産相続については遺言書を作成し残しておくことが、家族や親族間で不要な争いを引き起こさないための一番の近道と言えるでしょう。
遺言書というのは、作成しておけば何でも有効というわけではありません。法的な効力を持たせるために、さまざまなルールの上に作成し保管した遺言書でないと、作成しておく意味のないものになってしまいます。
遺言書には大きく分けて3種類あります。
・自筆証書遺言
自筆証書遺言はその名のとおり、自身で作成する遺言書のことです。書き方や用紙も自由に作成することができるので、思いついたらすぐに作成することも可能です。ただし、規定の条件を満たしていない場合、内容が無効となり法的な効力を持たない可能性もあります。
手軽さと共にデメリットも大きいので、確実な相続のためにはリスクがあると言えます。
・公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場で公証人立ち合いのもと作成されます。費用が発生しますが、自筆証書遺言とは異なり、条件を満たさず無効となる可能性は低く、確実な相続を行うためにはとても有効な遺言書と言えます。また、遺言書の保管場所も公証役場となるので、紛失や改ざんの心配もありません。
・秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言を混ぜ合わせたような特徴を持ちます。遺言書の存在を公にしたくない、誰にも内容を知られたくないという場合には、有効な方法です。作成した本人が遺言書を公証役場にもっていくことで、『自身で作成した遺言書である』ということを証明することができます。
しかし公証役場に預けたとしても、その内容を公証人がチェックすることはありません。そのため自筆証書遺言と同じく、内容の不備で無効になる可能性もありリスクが高い方法でもあります。
自身で遺言書を作成することに不安がある場合や、確実に法的な効力を持つ遺言書を作成したい場合には、公証人立ち合いのもと、公正証書遺言で遺言書を作成しましょう。不備のない遺言書を公証役場で保管してもらうことで、安心して自身で思い描いた相続を行ってもらうことが期待できるでしょう。
作成しておいても無効になってしまう遺言書とは?
確実に法的効力を持つ遺言書を作成したい場合には、公正証書遺言を選択するのが望ましいと言えますが、思いついた時に遺言書を作成したい、財産の変動や気持ちに変化があった時にすぐに加筆や修正などをしたい、という思いから、自筆証書遺言を選択される方もいらっしゃるでしょう。
しかし専門家の元で作成する不備のほとんどない公正証書遺言に比べ、不備が見つかる遺言書というのは自筆証書遺言がほとんどと言えます。実際に無効とされる自筆証書遺言とはどんなものなのがあるのでしょうか?
自筆証書遺言書で無効とされるもの
・日付の記載がない
遺言書の日付が必要なのは、遺言書の作成時に遺言能力があったのか、遺言書が複数存在する場合の時系列を判断するためなどが理由と言われています。
・全てパソコンで作成されている
パソコンで作成可能なのは、秘密証書遺言もしくは自筆証書遺言に添付する財産目録のみです。自筆証書遺言そのものは条件を満たしません。
・録音で作成されている
録音や録画は遺言書として効力は持ちませんが、故人に遺言能力があったことや偽造でないことなどを立証する役割は果たすかもしれません。
・遺言者以外が書いた
故人の意思が反映されていない、認知症を患っていたなど、遺言書の内容に第三者の意図が感じられる場合も同様です。
・署名がない場合や、他人が署名した
・相続する財産の内容が不明確である
どの資産を誰に相続させるのか、具体的に明確になっていないと有効となりません。
などの理由で、遺言書自体が無効と判断されることがあります。
遺言書が無効となった場合どうなる?
遺言書に不備がみつかり法的効力を持たない疑いがある、遺言書の内容にどうしても納得できない相続人がいる場合などは、訴訟や遺産分割協議を行う可能性が出てきます。
・遺言無効確認訴訟
遺言書が無効であることを訴える裁判であり、遺言能力や自筆かどうかなどが争点になります。原則的には訴訟の前に調停の申し立てを行いますが、調停による解決が難しい場合は訴訟を起こすこともできます。さまざまな証拠が必要になるため、病院の診断書や介護記録、筆跡鑑定などの情報や証拠書類を集める必要が出てきます。
・遺産分割協議
遺言書の無効が確定した場合などは、相続人全員で遺産分割協議を行い財産の分配を決めていきます。状況にもよりますが、遺産分割協議は基本的に争いとなるケースが多くなるでしょう。話し合いがまとまらない場合は、調停に発展することになります。
・遺産分割審判
遺産分割協議や遺産分割調停は、相続人同士の話し合いで解決の糸口を見つける方法ですが、遺産分割審判は話し合いではなく、裁判所が遺産分割の方法を決定することになります。裁判所による審判は強制力があるので、その内容に必ず従う必要があります。
内容に不備があることによって法的効力を持たない遺言書になってしまうことは、このような事態を招きかねません。できる限り、家族や親族ら相続人の間での不要な争いを避けるために、遺言書の準備は慎重に時間があるうちに進めておくことがおすすめです。できるならば、作成前や作成時に専門家に相談をおこなった上で準備をすることができると安心です。
まとめ
遺言書の準備というのは、財産の洗い出しなども必要となり思っている以上に時間や体力を要する作業になることもあります。高齢になってくると、気力も体力も衰え、遺言書の準備をすることが億劫になることもあるでしょう。また、自分の意思に反して身体の自由が利かなくなったり、認知症を患ってしまう可能性もあります。
そのため、残される家族の間での争いを避けるためにも、元気なうちに遺言書を作成しておくことが大切です。
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