(本記事作成日:2021年10月23日)
前回の記事「書いた遺言書が無効に!?必ず守るべき自筆証書遺言作成ルールがあります!」では、遺言書の種類の一つである「自筆証書遺言」のついてお伝え致しました。
自筆証書遺言の場合、遺言者(遺産の所有者で、遺言書を作成する人)一人で作成できるという手軽さがありますが、一方で、偽造紛失の恐れや、内容の不備によって遺言書が無効になる可能性があります。
このような事態を防ぐために有効となる手段が、今回お伝えする「公正証書遺言」です。
今回の記事では、公正証書遺言について、詳しくお伝えしていきます。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、公正証書の形で作成される遺言書のことを言います。
公正証書とは、公証人(裁判官などの経験のある法律の専門家で、法務大臣によって任命された公務員のこと)によって作成された書類のことをいい、強い効力を有するものになります。
自筆証書遺言と異なり、遺言者一人で作成することができないため、作成方法については以下に詳しく述べてきます。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言のメリット

1.偽造紛失の恐れがない
公正証書遺言は公証人によって作成され、公証役場にて保管されます。
そのため、遺言者以外による偽造や、紛失の心配がありません。
公正証書遺言は公証人が作成することから、その内容に対して信憑性が高く、相続人の間での相続トラブルを避けることも期待できます。
なお、自筆証書遺言であっても法務局による保管制度ができたため、偽造紛失の恐れがないというメリットは自筆証書遺言でも実現ができます。

2.無効になる心配がない
公正証書遺言の場合、遺言者の意思や財産の情報をもとに、その内容を公証人が作成してくれます。
交渉人は法律の専門家であり、公正証書の書き方に精通しています。
そのため、形式・内容による不備によって公正証書遺言が無効になる心配がありません。
一方の自筆証書遺言の場合、法務局の保管制度によって形式的な不備はチェックしてもらうことができますが、内容についてのチェックはされません。
そのため、いざ遺言者が亡くなり、遺言書の内容が実現されようとする時、内容に不備が見つかった場合には無効となり、遺言書の内容が実現されない恐れがあります。

公正証書遺言のデメリット

1.作成に費用がかかる
公正証書遺言を作成する場合には、以下の費用が必要になってきます。

・公正証書作成手数料以下のような金額になります(全国一律)
・必要書類取得費用
・証人の日当(証人準備を公証役場や専門家に依頼する場合)
・公証人の日当・交通費(公証人が遺言者の自宅などに出向く場合)

遺言書に記載する財産の価格によって公正証書作成手数料が変わってくるため、個々に計算する必要があります。
あくまで一例ですが、遺言書に記載する財産が3000万の場合で、妻と子供に1500万円ずつ相続させるという内容にする場合には、以下の費用がかかります。

公正証書作成手数料 妻分:23,000円 子供分:23,000円 加算(※)11,000円
          合計:57,000円
          (※)遺言書に記載する財産の合計が1億円以下の場合、手数料が11,000円
             加算されます

手数料に関しては公証役場にて明細を出してくれますので、確認するようにしましょう。

2.作成に時間がかかる
公正証書遺言の場合、公証役場にて作成する必要があります。
そのため、公証役場まで出向くか、公証人と都合を合わせて、指定の場所に出向いてもらう必要があります。
また、作成するにあたり、まずは公証人が遺言者の意思や財産の情報を確認して原案を作り、その後本番となります。
このように手順を踏んで作成するため、自分一人で作成する自筆証書遺言と比べて完成までに時間がかかります。

公正証書遺言作成までの流れ

1.相続人の特定、各相続人の相続割合・遺留分の把握
自筆証書遺言作成と同じく、まずは相続人の特定があります。
法律により、誰が相続人かが決まっています。
また、相続人ごとに、遺産がどのような割合で振り分けられるか(法定相続分)も決まっています。
まずは、「誰に」「どのくらいの割合」遺産が渡るのか把握しましょう。

遺言書によって財産の振り分け方を指定する際に注意すべきことがあります。
それは、「遺留分」と言うものです。
これは、法律で守られた、相続人ごとの最低相続割合のことを言います。
そのため、この遺留分を超えて遺産の振り分けをしようとしても、それは法律上認められないことになります。
例えば、自分の財産を全額、家族以外の第三者に渡そうと考えても、配偶者や子供などの家族がいる場合には、遺留分に相当する金額は家族に渡り、残りの金額が第三者に渡るようになります。
遺言書を作成する場合には、この「遺留分」を考慮して作成することで、相続人間でのトラブルを防止することができます。

2.財産目録作成
前述したように、財産目録とは、 遺言者の所有する財産をまとめた一覧表のことです。
財産目録を作ることで、財産の全体を把握することができ、それを元に相続割合を決めることができます。
財産目録の作成は義務ではありませんが、作成しておくことで遺言書の作成がスムーズに進みますのでオススメです。

3.財産の振り分け方を決める
相続人と財産が特定できたら、遺言者の意思に基づき、「誰に」「何を」「どのくらい」渡すのか、振り分け方を考えます。
前述したように、これらを決める際には「遺留分」に配慮し、それを超えない範囲で割合を指定して下さい。

4.必要書類収集
公正証書遺言を作成するにあたっていくつか必要になる書類があります。
例えば、遺言者の印鑑証明書・戸籍謄本、遺言書によって財産を受け取る人の戸籍謄本・住民票などです。
何の書類が必要になるかは、事前に公証役場に必ず確認するようにしましょう。

5.公証人との事前打合せ
財産の振り分け方を決め、必要書類を整えたら、公証役場にて公証人と事前の打合せを行います。
ここでの打合せ内容をもとに、公証人が公正証書遺言の原案を作成いたします。
原案の内容で間違いなければ、いよいよ作成本番になります。

6.公正証書遺言作成本番
公証役場にて、遺言者・公証人・証人二人の立会いのもと公正証書遺言の作成本番が行われます。
遺言者本人が公証役場に出向くことが難しい場合には、指定した場所に公証人が出向くこともできます。
ただしこの場合には、余分に費用がかかりますのでご注意ください。
作成に必要な手数料は、作成当日に現金にて支払います。

当日作成されるものは、公正証書遺言の原本・正本・謄本の3通です。
原本は公証役場にて保管され,正本と謄本は持ち帰ることができます。
一般的には、正本は遺言執行者(遺言書の内容を実現するために各種手続きを行う人)が、謄本は遺言者本人が保管するパターンが多いです。

まとめ

・公正証書遺言とは、公正証書の形で作成される遺言書のことで、強い効力を有する
・公正証書遺言は、偽造紛失の恐れがない、形式・内容面での不備の恐れがないというメリットがある一方、作成に費用と時間がかかるデメリットもある
・具体的な流れとしては、相続人と相続割合を特定後、財産の振り分け方を決め、公証人との事前打合せを経て作成本番となる

公正証書遺言を作成する場合には、費用と手間がかかりますが、遺言書としての有効性が担保されるため、遺言書の内容を確実に実現したいと思う人にとっては非常に有効な手段となります。
ご自身で様々な準備をし、公証人との打合せをすることも可能ですが、一人でやるには大変な作業になります。
そのような場合には、専門家に頼ることも必要ではないでしょうか。
遺言書作成でお困りごとがあれば、名古屋市熱田区にある合同会社SBNに一度ご相談ください。
初回無料でご相談頂けますので、お気軽にご連絡下さい。
親切丁寧に対応させていただきます。

参考
裁判所 https://www.courts.go.jp/index.html
日本公証人連合会 https://www.koshonin.gr.jp/
京橋公証役場 http://www.k-kosho.jp/index.html