全国の中小企業の経営者の悩みの一つが後継者問題です。
中小企業庁によると、2025年までに70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人で、このうち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)は後継者未定となっています。
また、コロナウィルスの影響で業績が悪化し、企業の売却を考える経営者も増えてきたことと思います。
今回は、企業の行う「終活」について解説していきます。
企業の終活とは
企業の終活とは、自分が引退後の企業のあり方について準備しておくことを言います。
経営者はいつまでも現役でいられるわけでは無く、引退後のことを常に考えておく必要があります。
また、健康問題など、突発的な事が原因で突如決断を迫られる可能性がありますが、予め対策を立てておかなければ、いざという時に対応できず、会社の存続自体が危ぶまれる可能性があります。
少しでも早く、準備しておくことが何より大切です。
なぜ企業が終活をするのか
経営者の高齢化
東京商工リサーチのデータによると、2020年12月時点での全国の社長の平均年齢は62.49歳で、前年から0.33歳伸びています。
社長の高齢化は年々進んでおり、高齢になるほど健康に不安が生じてきます。
病気以外でも、突発的な事故に巻き込まれる危険もあります。
実際、社長の高齢化と業績悪化の関連性は高く、直近決算で減収企業の社長は60代が48.8%、70代以上も48.1%を占めました。
赤字企業は70代以上が22.3%で最多となっています。
また、2020年に「休廃業・解散」した4万9,698社では、社長の平均年齢は70.23歳と初めて70歳を超えました。
このように、経営者の高齢化が業績に与える影響は大きく、対策が急がれます。
全国127万社が後継者未定
冒頭でも述べたように、2025年までに全国で127万社(日本企業全体の1/3)が後継者未定の状態になると予想されています。
後継者未定の場合、会社が存続できず、そこで働く従業員の雇用が失われてしまいます。
中小企業庁によると、現状を放置した場合、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年までに累計で約650万人の雇用が失われると予想されます。
これは、一企業の問題だけで無く、経済に与える影響も大きいため、社会全体で取り組んでいくべき課題となります。
具体的に何をすれば良いか
親族への事業承継(親族内承継)
事業承継の最もメジャーな方法としては、息子や娘に会社を継がせる「親族内承継」が挙げられます。
一般的にも、「事業承継=子どもへ継がせる」と捉えられていることが多いのではないでしょうか。
「できれば子どもに会社を継いでほしい」と希望する経営者もたくさんおられることと思います。
しかし、親族内承継の場合、後継者として育成する時間が必要です。
経営の感覚や能力は、一朝一夕に身につくものではありません。
長い年月をかけて、経営者としての資質を備えなければなりません。
また、その間に従業員や取引先などにも後継者として周知して受け入れてもらう必要があります。
親族内承継をお考えであれば、10年ほどは見ておく必要があります。
会社役員・従業員への事業承継
現在その企業で働いている従業員や役員に事業を継がせることも一つの手段です。
役員・従業員であれば、社内のことを熟知しているため、経営自体が激変しづらく、組織体制が保ちやすいと考えられます。
また、経営者が一緒に仕事をしてきた人材から決めることができるので、能力や人柄が分かりやすく、安心できます。
従業員や取引先にとっても、知らない人が新社長になるよりも安心感があるため、内外で了承が得られやすいと考えられます。
親族以外の第三者への事業承継(M&A)
経営者の親族や役員・従業員以外の人・会社に事業を引き継ぐ場合を「第三者への承継」とよびます。第三者への承継をすることで、現経営者の親族や会社の従業員などに後継者候補がいなくても事業を継続できることです。
しかし、新しい経営者が業務の具体的な方法がわからず、事業承継がスムースに行われない可能性があります。
また、経営理念などが変わり、従業員が困惑してしまうことも考えられます。
廃業
後継者が見つからない場合には、自主的に事業を辞める「廃業」も一つの手段です。
しかし、廃業になると従業員やその家族の生活に甚大な影響が及ぶため、出来る限り避けなければなりません。
廃業を避けるためにも、できるだけ早く後継者を選び、事業承継の準備をしておきましょう。
専門家やサービス利用を検討してみましょう
現在では、M&Aのマッチングサービスや専門サイトがあり、様々な情報を入手する事が出来ます。
また、税理士やコンサルタント、金融機関など、専門家へのご相談も検討してみてください。
事業承継はすぐに実現できるものではないため、ご自身やご家族、従業員や取引先など、関わる人々の生活を守るためにも、早めに準備を進めましょう。