おひとりさまや熟年離婚、事実婚などの言葉も随分と浸透をして、ライフスタイルが多様化する現代ですが、老後も自分らしく過ごしたいと思われる方も増えているようです。自身にとって快適でより楽しい老後を過ごすために是非取り入れて欲しい活動が、終活です。終活はこれまでの生活を振り返り、その先の人生をより良くするための前向きな活動です。
その内容は多岐に渡りますが、財産の管理や遺産相続などについて考えておくのも非常に大切な項目のひとつと言えるでしょう。
たとえば遺言書を作成しておくことで親族間での不要なトラブルを回避したり、最期を迎えた後の手続きなどをスムーズに進める助けとなります。しかし遺言書を作成しておいても、加筆や修正などを加えずに放置をしておくと、遺言書に書かれた相続人が自身よりも先に死亡してしまうこともあり得るでしょう。
今回の記事では、遺言書に記載しておいた相続人が死亡してしまっている場合の相続について考えていきたいと思います。
遺言書は作成する必要のあるもの?
終活という言葉や活動が広く知られるものとなった背景には、日本が置かれている社会情勢の変化というのが挙げられるかもしれません。少子高齢化や核家族化のほか、社会保障への不安から老後の生活を心配する人も少なくないでしょう。またライフスタイルの多様化により様々な家族のかたちが増えており、人生の最期はできるだけ周囲に迷惑をかけずに終わらせたいと思うのは、多くの人が抱える思いかもしれません。
そんな思いと向き合い、自身の死を意識しながらそれに向かって活動を進めていくのが終活です。単に物や資産を整理しておくだけではなく、自身のこれまでの生活を見つめ直し、これから先の人生をより実りあるものにしていくことが大きな目標と言えます。
そのための準備として必要になってくるのが、身の回りの整理や遺産相続の準備、葬儀やお墓の希望を伝えたり準備をしておくことです。
今回はその中でも遺言書について考えていきたいと思います。
まず遺言書というのは、全ての人に必要なものなのでしょうか?自分には大した財産がないから遺言書は必要ないのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかしごく普通の家庭であっても、いざ相続となった時に、お金が絡むと思いもよらなかったところからトラブルに発展してしまうことが残念ながら少なくないのです。残された大切な家族が自身の遺産を巡って揉めてしまうのであれば、遺言書という形で意思を明確に残しておくのも愛情のひとつとして、トラブルを回避するための近道と言えるでしょう。
そのため、遺言書は自分に必要はないものとは思わずに、どんな方でも作成して準備をしておけると安心なのです。
遺言書の性質やルールを理解しておく
遺言書というのは、誰に何を相続させるのかをただ書いておけば良いというものではありません。遺言書を作成しておく大きな目的のひとつは、その内容に法的に効力を持たせることです。遺言書を法的に有効にするためには、思い付くままに文章に残しておけば良いというわけではなく、さまざまなルールにのっとった上で作成し保管をしておく必要があります。
遺言書には大きく分けて下記の3種類があります。
◆自筆証書遺言
遺言者自身が遺言書の内容、日付、氏名を自筆し・押印し、自身で保管する形式。
◆公正証書遺言
遺言内容を公証人が筆記・押印して遺言書を作成する形式。作成時に、証人の立会いが必要で作成した遺言書は公証役場で保管。
◆秘密証書遺言
本文は代筆可能で、署名・押印は自身で行い作成をしたものを、公証役場で自身の遺言であることを保証してもらう形式で、保管は自身で行う。
この中で、法的有効性を持たせるために一番おすすめなのは、公正証書遺言です。専門家の元で作成、保管をするため内容に不備が発生する可能性が最も低いと言えます。
もし遺言書を作成せず亡くなった場合、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。そこで分割方法などが話し合われるのです。
遺言書が作成されていると、その内容が法定相続分よりも優先されることになるため、被相続人の意思や想いを明確に残すことができるのです。
例えば、介護や身の回りの世話をしてくれた人や血縁関係のない人など、法定相続人ではない人に財産を残したい場合には、遺言書が必ず必要となります。
また、法定相続人の遺留分についても考慮をしておく必要があるでしょう。配偶者と子ども、孫などには、最低限相続できる遺留分が認められているため、被相続人の意思の通りに分配することができない場合もあるのです。
相続人が死亡してしまった場合はどうなる?
遺言書とういうのは、さまざまな観点から見て作成しておく必要性というのがありますが、万が一遺言書で指定した相続人が被相続人よりも先に亡くなり、その後に被相続人が亡くなった場合には、相続するはずだった財産を法定相続人で遺産分割協議することになります。また、亡くなった相続人に子供がいる場合でも、代襲相続はされません。
相続人の方が先に亡くなることを想定して遺言書を作成していなかった場合には、結果として被相続人の希望とは異なる形での遺産相続となることが多いでしょう。さらに、相続人間で遺産分割協議を行うことになるため、そこで争いを生んでしまうリスクも持ち合わせています。
このような問題を回避して、できる限り希望通りの分配を行うためには、遺言書を作成する際に「遺言書に記載した相続人が先に亡くなった場合は、誰に財産を渡したいか」まで想定して文面を用意しておくことで、遺言者の希望に沿った内容の相続を実現できる可能性が高くなるでしょう。
相続人が先に死亡した場合
・亡くなった相続人に対する遺言は無効
・代襲相続はされない
・亡くなった人を除いた相続人間で遺産分割協議をおこなう
相続人が死亡した場合にできることとは?
人の死というのは誰にも予測ができないものです。遺言書を作成しておいても、その遺言書が実際に役に立つまでには何十年とかかることもあれば、財産が増減する可能性、そして記載された相続人が先に亡くなってしまう可能性も十分ありうるのです。
そのため、遺言書というのは作成して終わりではなく、できることならば定期的に内容を確認して加筆、修正しておくことが望ましいと言えます。
相続人が死亡した際にできること
・遺言書を書き直す
遺言書は遺言者の思いに合わせて何度でも書き直すことが可能です。遺言者が残した最新日付の遺言書が有効となります。何度か修正や書き直すなどを
おこなった際には、古いものは確実に破棄するなどをして、家族が混乱しないように注意をしましょう。
公正証書遺言で作成している場合は、公証人が立ち会うため最新の遺言書が明確です。
・生前贈与を行う
相続予定の財産を生前贈与しておくことで、推定相続人の予期せぬ死亡に対応できます。生前贈与とは、言葉の通り生きている間に財産の贈与を開始
することができるので、死後の相続を待たなくても財産を引き継げます。気をつけておきたいのは、生前贈与には原則として贈与税がかかることです。
1年あたり110万円まで非課税となるため、生前贈与は早めに始めるのがおすすめです。また生前贈与の相手が法定相続人にあたる場合は特別受益
として扱われるため、注意が必要です。
まとめ
終活の取り組みの中でも、遺言書はできるだけ準備をしておいていただきたいものになりますが、より自身の希望する相続を実現するために、予備的遺言も併せて残しておけると安心と言えます。また、相続人が死亡した場合は、遺言書を何度でも書きなおせます。大切な家族である相続人間のトラブルを防ぐためにも、自身が納得できる内容の遺言書を作成できるといいですね。
Good Endingでは、終活のご相談を初め、終活分野での専門家紹介を行っております。
税理士を初めとした専門家チームが、ご相談者様のお悩みを全力でサポートいたします。
終活でお困りの方は、お気軽にご連絡ください。