最近は日本を取り巻く社会情勢の変化も伴い、人々のライフスタイルも多様化していると言えるでしょう。少子化、超高齢化社会、晩婚化、熟年離婚、おひとりさま、さまざまな言葉が生まれ、浸透しています。
そんな中で、より自分らしく充実した老後を迎えたいという思いから、終活を取り入れる方も多くいらっしゃいます。終活は、これまでの自身の人生を振り返り、これから先の人生をより良いものにしていくという前向きな活動です。自身の葬儀やお墓のこと、医療や介護の希望や要望、そして財産の管理や遺産相続についてなど、活動の内容は各々多岐に渡ります。
その中の一つに遺言書の作成、準備とういうものがあげられます。お金というのは、どうしてもトラブルを生みやすい性質があります。残される家族の負担をできるだけ減らし、不要な争いを避けるために用意ができていると安心です。
その遺言書も、さまざまな家族の形がある昨今、注意が必要と言えるかも知れません。たとえば、複数回結婚歴があり前妻との間に子供がいる場合、相続はどのようになるのか、そもそも遺言書を残しておいた方が良いのか、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
今回の記事では、前の結婚で子供がいる、間異母兄弟がいる場合などの遺言書の必要性について考えていきたいと思います。
遺言書の必要性とは?
自分には大したお金など残せないから、そもそも遺言書なんて準備をしておく必要がない。そう考える方もいらっしゃるかもしれません。遺言書が必要なのはお金持ちの家庭だけという認識は、正しくないかもしれません。裁判所の統計を見ても、財産が5千万円未満の家庭の遺産争いが、全体の7割以上を占めているという結果も出ています。お金というのは、金額の大小に関わらずトラブルを生みやすいものなのです。
遺言書の作成は手間がかかる、お金がかかると敬遠されることもありますが、遺言書を残す最大のメリットは、相続争いを未然に防ぐことです。そのため、遺言書を法的に有効なものにするめには、さまざまなルールが存在するのです。民法で定められた様式などを守らずに作成しても、それは結果遺言書としての意味を果たさなくなってしまうのです。
まずは、遺言書の種類について把握していきましょう。
遺言書には、
・自筆証書遺言・・・自分自身で作成する遺言
・公正証書遺言・・・公証役場にいる公証人によって作成、発行され、保管をされる遺言書
・秘密証書遺言・・・遺言書は自分で作成し、公証役場に持ち込み保管してもらう遺言書
の3種類があります。
自筆証書遺言と秘密証書遺言については自身で作成することになり、仮に内容に不備があったとしても指摘をされず保管されることがほとんどでしょう。
公正証書遺言については、作成時から保管に至るまで専門家の元で行われるため、不備が発生する可能性は非常に低く遺言書を作成する意義も保たれます。
専門家に相談や作成を依頼すると費用が発生するため抵抗を感じるかも知れませんが、不備のない遺言書を作成するためには一番の近道と言えるでしょう。
遺言書の必要性が高いのはどんな人?
次に、遺言書が特に必要だと思われる場合を考えていきたいと思います。基本的に遺言書は全ての人に準備をしておいてほしいもの、と考えますが、
下記の場合は必ず準備をしておくことをおすすめします。
・遺産の分配内容に希望がある
・法定相続人以外の人に相続させたい
・相続させたくない相続人や財産がある
・法定相続人が誰もいない
などです。
遺言書がない場合は、法定相続人全員が集まって遺産分割協議を行うことになります。しかし法律で配分順位や割合が決められていても、実際話し合いとなると、争続に発展するケースが後を絶たないのが現実です。
また遺産の相続をするのが、配偶者と配偶者との子供が1人、もしくは成人した子供が1人という場合は遺言書を作成する必要性は低いと言えるでしょう。
これが前妻と後妻の間にそれぞれ子供がいる、実子と養子がいる、嫡出子と非嫡出子がいる、などの場合は遺言書を作成しておくことを強くおすすめします。
前妻は婚姻関係にないために相続する権利はありませんが、前妻との子供には権利が発生します。関係性によっては、遺産分割方法や項目でもめることもあるでしょう。また、実子と養子がいる、嫡出子と嫡出子ではない子がいる場合も同様です。
前妻の子と後妻の子、同じように相続の権利は発生する?
被相続人が再婚をしていて前妻との間に子どもがいる場合、その子たちは同じように相続人になれるのでしょうか。
相続権についての考え方
誰が相続人となるかは法律で決められています。大きく分けると、下記のように二つに分けられます。
・配偶者
死亡した人の配偶者(妻、夫)は常に相続人となります。
・血族相続人
配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。
第1順位:子(既に死亡しているときは、その子供の直系卑属(子供や孫など))
第2順位:直系尊属(両親等)
第3順位:死亡したひとの兄弟姉妹(既に死亡しているときは、その人の子供)
第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。なお、相続を放棄した人は初めから相続人でなかったものとされます。
前妻は離婚をした時点で配偶者ではなくなるため、相続人にはなりません。しかし、離婚しても前妻の子と父との親子関係は続くため、前妻の子も相続人となります。そのため、前妻の子にも、第1順位の相続人となり、遺産の相続を求める権利が発生するのです。
法定相続分はどうなる?
法定相続分は次のようになります。
子供、直系尊属、兄弟姉妹がそれぞれ2人以上いるときは、原則として均等に分けられることになります。
・配偶者と子供が相続人の場合
配偶者 2分の1
子供 2分の1
・配偶者と直系尊属が相続人の場合
配偶者 3分の2
直系尊属 3分の1
・配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者 4分の3
兄弟姉妹 4分の1
この割合は、民法に定められた法定相続分であり、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の持分となります。相続人間で合意が得られている場合、遺言書がある場合は、この相続分で遺産の分割をする必要はありません。
前妻の子には相続させたくない場合には?
上記のように、民法上で前妻と後妻の子供には同じように相続人としての権利が発生します。しかしどうしても前妻との子に相続をさせたくない場合、いくつかの対策があります。
・遺言書を作成する
例えば、後妻や後妻との間の子に財産を相続させたい時は、その旨を遺言書に記載することで、基本的には遺言書の内容のとおりに財産を相続させることで、前妻の子への相続を避けることができます。遺言書が存在すると、相続人全員で遺産分割の話し合いをする必要がなく、その点から見ても遺言書をつくるメリットがあると言えるでしょう。
ただし、前妻の子にも遺留分という権利が認められます。遺留分とは、法律上相続人に最低限認められている遺産の取得分のことをいいます。前妻の子の場合は、本来もらえるはずの法定相続分の2分の1を請求することができます。そのため、遺留分の対策をとることも必要でしょう。
・生前贈与をしておく
相続というのは、被相続人が亡くなった時点で保有する財産を相続するという問題です。そのため、生前中に財産を贈与していれば、亡くなった時点では被相続人のものではないため、相続の対象から外れることになります。
生前贈与は相続税の対象にもなるので、始めるのは早い方が良いとされています。ただし生前に相続人に贈与した財産は、特別受益として遺産分割のなかで考慮されたり、遺留分の問題になったりする場合があるので注意が必要です。
・相続放棄をしてもらう
被相続人が亡くなった後に、前妻の子に相続放棄をしてもらうという方法もあります。相続放棄をしてもらうことで、前妻の子は相続人ではなくなり財産を引き継がないことになります。
しかし、相続放棄はもちろん強制することはできませんので、相続人間での話し合いが必要となるでしょう。
まとめ
被相続人が亡くなった際、前妻の子と後妻の子がいる場合、何も対策を取っていない時には相続人の間で遺産分割の話し合いをする必要があります。相続人間の信頼関係の良し悪しにより、トラブルに発展する可能性も十分考えられるでしょう。そのためには、やはり遺言書を作成しておくこと、遺留分についての対策をしておくことが大切です。
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