終活を進める中で是非準備をしておいていただきたいものの一つが、遺言書です。終活はこれまでの人生を振り返り、その先の生活をより豊かに自分らしく過ごすための準備と言えます。そのために、財産の整理や相続問題をクリアにしておくことはとても大切なのです。
遺言書は自身で準備することも可能ですが、確実に法的に有効なものにするには様々なハードルがあります。また遺言書を作成するまでには、財産の洗い出しをしたり誰に何を相続させるのかを検討する必要もあります。
ここまで入念な準備が必要な理由は、やはりお金というのは家族、親戚間においても争いの火種となる可能性をはらんでいるということに尽きます。

例えば万が一、遺言書をあらかじめ準備していなかった場合、いざ相続となった時に遺言書をあたかも元々存在していたかのように偽造をしようと考える人が出てくるかもしれません。
また遺言書が準備をされていても、その内容を自分にとって有利な内容となるよう書き換えてしまう可能性もあるのです。

今回の記事では、このような事態を避けるために、どんなことに注意をして終活を進めていけば良いのか考えていきたいと思います。

遺言書の必要性について

例えば、万が一自身が亡くなった際に遺言書がなくても相続は行われます。家族や親族の仲が良く、相続人にあたる全員が異議を申し立てることなく遺産分割が行われるのであれば遺言書は必要ないと言えるでしょう。しかし生前仲が良いと思っていた家族や親族でも、いざ遺産相続というお金に関する問題を目の前にすると、トラブルが発生する可能性がゼロではないのです。
そんな時に遺言書が残されていれば、少なくとも親族間の争いやトラブルを抑止する効果が十分にあるのです。

遺言とは、自身の死後に財産をどのようにしたいのかと思っていることを相続人等に伝える最後の意思表示です。遺言書を残すことでかえって不要なトラブルを引き起こすのではと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば相続人全員の合意が得られるのであれば、遺言書に従わずに自由に遺産分割をすることも可能です。相続人たちの意見がバラバラで、それぞれが自分の権利を主張した場合などに物を言うのが遺言書と言えます。

したがって、万が一の親族間のトラブルを想定して遺言書を残しておくことは、誰にとっても大切で必要な作業といえます。
さらに、遺言書を作成する前にその内容について家族や親族に事前に相談をしておけると尚安心です。死後に遺言書が発見され、不満が出ることを防ぐためです。遺言書はの加筆や修正は何度もできるので、思い立ったタイミングで万が一の備えとして準備しておけると安心なのです。

遺言書にまつわるトラブルとは?

遺言書を作成する必要性についてはここまでご紹介してきましたが、せっかく作成した遺言書もそれ自体がトラブルになってしまうということ実は多いものです。
まず遺言書というのは、法的効力を持たせるために、決められた形式を守り作成する必要があります。ルールにのっとり作成されていない遺言書は無効となり、作成をしておく意味がありません。また、遺言書には下記の3種類があります。
◆自筆証書遺言
 遺言者自身が遺言書の内容、日付、氏名を自筆し・押印し、自身で保管する形式。
◆公正証書遺言
 遺言内容を公証人が筆記・押印して遺言書を作成する形式。作成時に、証人の立会いが必要で作成した遺言書は公証役場で保管。
◆秘密証書遺言
本文は代筆可能で、署名・押印は自身で行い作成をしたものを、公証役場で自身の遺言であることを保証してもらう形式で、保管は自身で行う。

この中で、法的有効性を持たせるために一番おすすめなのは、公正証書遺言です。専門家の元で作成、保管をするため内容に不備が発生する可能性が最も低いと言えます。

しかし、自身で準備できる手軽さを優先し、自筆証書遺言を選択される方も少なくありません。しかし、遺言書の偽造や書き換えなどのトラブルが発生しやすいのも、自筆証書遺言と特徴のひとつと言えるでしょう。

◉遺言書の偽造がされたと思われる場合

遺言書の偽造や変造がされる場合に多く用いられる自筆証書遺言ですが、偽造や変造の目的の大半は自分にとって有利な財産の分配が行われるようにするためと言えるでしょう。自筆証書遺言は名前の通り、作成する際に遺言者が全文や日付、氏名などを自身によって記載して印を押す必要があります。

遺言書における偽造や変造の特徴は、
・明らかに他人の筆跡である
・遺言者自身が遺言書を書いていても、別の筆跡で訂正がされるいる
・同居している家族が故人になりすまし遺言書を書いてしまう
・認知症を患った家族に意思と違った遺言書を無理やり書かせる

などといったことが考えられます。
亡くなった際に認知症がかなり進んでいる場合などは、残されている自筆遺言に対する遺言能力について争われることも想定され、裁判所から遺言が無効と判断される可能性もあります。

◉遺言書の偽造が疑われる場合にするべきこと

遺言書の無効を求め、調停・訴訟を起こす
まず自筆証書遺言は、遺言者の死後に「検認」を申し立てる必要があります。その手続きを経なければ遺言書の内容を法的に有効にすることができません。
検認とは、相続人に対して遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の状態を確定し、遺言書の偽造や変造を防止するためが目的とされています。
また封印のある遺言書については、家庭裁判所で相続人等の立ち会いのもとで開封する必要があるので注意しなければなりません。万一勝手に封を開けた場合、遺言書は有効ではありますが、5万円以下の過料に処される可能性もあるので気をつけましょう。

それまでの段階などで、遺言書の偽造の疑いを持った場合には、裁判所に対して訴訟を提起し、遺言無効の確認を求めましょう。その結果遺言が無効ということになれば、無効となった部分については遺産分割協議をやり直すことになります。

遺言書を偽造、変造した場合は犯罪に問われる?

遺言書を偽造などをした場合罪になる?

遺言書を偽造することは「有印私文書偽造罪」に当たり、法定刑は3月以上5年以下の懲役です。また遺言書を変造した場合にも、同様の刑罰が科されますので注意が必要です。

遺言書を偽造したり、変造した場合遺産を受け取ることはできる?

遺言書を偽造、変造した場合や勝手に破棄や隠匿することは、相続人の欠格事由とされています。相続欠格事由にあたる場合、相続権を失い相続人となることができないとされています。
ただし、相続欠格事由に該当する者が被相続人の子供や兄弟姉妹であり、その者に子どもがある時は代襲相続が認められ、遺産を受け取ることが可能です。

遺言書の偽造を防ぐためにはどうしたらいい?

遺言書の偽造や変造などを防ぐためには、上記でご紹介した公正証書遺言で遺言書を作成するのが一番の近道と言えます。
公証役場において、公証人によって遺言書を作成し保管をしてもらうため、遺言書に不備がある可能性も非常に低く、紛失や偽造がされる心配もありません。

また、自筆証書遺言にて自身で遺言書を作成したい時も、法務局において遺言書を保管してもらう「自筆証書遺言書保管制度」を利用することをおすすめします。利用する際には、遺言者本人が手続きを行い本人確認も行われ、法務局で原本が保管されるので安心です。

まとめ

遺言書の偽造などを行うと相続欠格事由となり、相続人としての資格を失うことになります。さらに、刑法上も犯罪が成立するため不利益はかなり大きいものと言えるでしょう。
遺言書の破棄、偽造などの問題が発生しそうな場合は、遺言書を法務局に預ける、もしくは公正証書遺言を作成するなどの予防策を講じることが重要と言えるでしょう。遺言書の作成などに関して不安を感じたり、破棄や偽造などが疑われたりする場合は、専門家に相談することをお勧めします。

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