人生の最期を迎えるにあたり、あらかじめ身じたくを整えておくための終活。その活動はそれぞれの思いにより、多岐にわたります。その中でも多くの人が、残される家族に向けて準備をしておく必要があると考えるのが、財産の整理や相続についてではないでしょうか。
お金の問題というのは、ささいなことからでもトラブルを生みやすい性質のあるものです。そこで相続人の間で無駄な争いが起こることを避けるために準備しておきたいのが、遺言書です。
遺言書とひとことで言っても、作成する上でさまざまルールがあります。それを守って作成しておかなければ、法的に無効とされ遺言書を作成した意味がなくなってしまうこともあり得るのです。
遺言書にはどんなルールや種類があるのか、また手書きだけではなくパソコンでも作成してもいいものなのか、正しい遺言書の作成方法を考えながら
遺言書の有効性についてご紹介していきたいと思います。
遺言書の作成方法について
終活は残される家族のためだけではなく、自身の人生を振り返り、残りの人生をより良く生きたいという思いから多くの人が取り入れる活動となっています。自分が置かれている状況や身の回りにあるものの価値を改めて認識することができる。そういったことも、多くの人が終活を行う要因となっているのではないでしょうか。
そしてこれらの終活を進める上で避けて通れないのが、財産の管理になるでしょう。
ここからの人生、こんな日々を過ごしていきたい、家族に残しおきたいものがある、葬儀や埋葬方法に希望があるなど、これからのお金の流れもきっちりと把握できていると安心です。
預貯金だけではなく、所有している不動産や生命保険、株や投資信託などの自身の財産の洗い出しを行い、資産価値を認識する必要があります。
これまでの長い人生の中で築いてきた財産を全て把握するには、思っている以上に時間と体力を要するものです。そしてそれを元に遺言書を作成することになるので、遺言書を作成する準備というのはできるだけ心身ともに元気なうちに行うのがおすすめです。
さらに、所有しているプラスとなる財産だけでなく、借入金、ローンなど負の遺産についても明確にしておくことが大切です。マイナスの財産というのも、そのまま家族に引き継がれてしまうからです。
できるだけ残される家族の負担を減らしたいというのは、誰しもが思うことでしょう。思い立った時に、少しつづでも準備を進めていきたいものですね。
遺言書には3種類あります
次に、遺言書の種類についてご紹介していきたいと思います。遺言書には大きく分けて下記の3種類があります。
・自筆証書遺言
自筆証書遺言はその名のとおり、自身で作成する遺言書のことです。書き方や用紙も自由に作成することができるので、思いついたらすぐに作成することも可能です。ただし、規定の条件を満たしていない場合、内容が無効となり法的な効力を持たない可能性もあります。
手軽さと共にデメリットも大きいので、確実な相続のためにはリスクがあると言えます。
・公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場で公証人立ち合いのもと作成されます。費用が発生しますが、自筆証書遺言とは異なり、条件を満たさず無効となる可能性は低く、確実な相続を行うためにはとても有効な遺言書と言えます。また、遺言書の保管場所も公証役場となるので、紛失や改ざんの心配もありません。
・秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言を混ぜ合わせたような特徴を持ちます。遺言書の存在を公にしたくない、誰にも内容を知られたくないという場合には、有効な方法です。作成した本人が遺言書を公証役場にもっていくことで、『自身で作成した遺言書である』ということを証明することができます。
しかしその内容を公証人がチェックすることはありません。そのため自筆証書遺言と同じく、内容の不備で無効になる可能性もありリスクが高い方法でもあります。
では次に、遺言書というのは必ず手書きでなければならないのか、それともパソコンなどで作成してもいいのか、有効性を交えながら考えていきたいと思います。
上記でご紹介した遺言書のうち、公正証書遺言については公証人が遺言書の作成を行うため、ここで考えていきたいのは自筆証書遺言と秘密証書遺言についてです。
遺言書は作成した後も、財産の状況や心情の変化などで、加筆や修正が必要なことも少なくありません。そんな時にも、手書きで遺言書を書いているのが面倒だと感じる方も多いかもしれません。手間や見栄えを考えると、パソコンで遺言書を作成することができれば便利な上に、気軽に取りかかることもできるかもしれません。
まず自筆証書遺言については、これまではすべてを自筆することが条件でしたが、2019年1月から自筆証書遺言の作成方法が一部見直され、財産目録の部分については、代筆やパソコンを使用して作成してもよいことになりました。
また、預金通帳や登記簿謄本のコピーを財産目録として扱うこともできるようになり、便利になりました。しかし、あくまでパソコン作成が有効なのは「財産目録」だけで、「誰に相続させるか」という本文にあたる部分はこれまでと同じように手書きでなければ無効となってしまいます。
とは言え、不動産の所在地や情報をすべて手書きで作成する必要があった頃に比べれば、特に高齢の方にとっては手間が省けたと言えるでしょう。
さらに、2020年7月10日からは自筆証書遺言を法務局で保管できるようになりました。それまでは自身で保管する必要があり、紛失や相続人による変造や偽造などのほか、死後に遺言書を発見してもらえないなどの恐れがなくなりました。
一方、秘密証書遺言については、署名と押印以外の内容は、手書き・パソコン・代筆のどの方法で記載してもかまわないとされています。
署名、押印や封印は遺言者本人が必ず行わないと法的効力を持ちませんが、財産目録以外すべて自筆で記入する必要のある自筆証書遺言と比べると、作成の負担は少ないと言えるでしょう。秘密証書遺言はこれまであまり活用されていませんでしたが、パソコンで作成可能なので、どうしても手書きは面倒でパソコンで作成したいという方は積極的に活用を検討してみると良いでしょう。
ただし、秘密証書遺言は基本的に内容を確認されることがないので不備があったとしても気が付きにくく、さらに自分で保管しなければならないので、紛失の恐れはあると言えるでしょう。
これまでも、秘密証書遺言はメリットが少なく選択する人が多くはありませんでしたが、自筆証書遺言が法務局で保管できるようになり、さらにこの遺言書を選ぶ人は減るかもしれませんね。
まとめ
・自筆証書遺言は、財産目録の部分については、代筆やパソコンを使用して作成しても良いが、本文について自筆で書く必要がある。
・秘密証書遺言は、署名と押印以外の内容は、手書き・パソコン・代筆のどの方法で記載してもかまわない。
遺言書は、終活の中で是非取り入れていただきたい活動のひとつです。公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言のどれが自身にとって一番扱いやすいのかを考え準備をしておけると安心です。
法改正によって自筆証書遺言を活用することが容易になりましたので、遺言書を準備するのが億劫だったという方もぜひ遺言書を正しく作成し、適切に保管して活用することをおすすめします。
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