最近よく耳にする機会も多い終活という言葉ですが、どのような意味があり具体的には何をするのでしょうか?言葉だけを聞くと自身の死について考える、つらく暗いイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし実際のところ終活という活動の目的は、これまで歩んだ人生を振り返り、気持ちの整理をしながら残された人生をより充実したものにするための前向きな活動なのです。
具体的には、介護や医療の要望をまとめておいたり、葬儀やお墓の希望や考え方を伝える、財産の相続を円滑に進めるための準備をしておけると安心です。それが残された家族の負担を減らすことに繋がります。
特に財産に関しては遺言書を作成し準備をしておけると、家族間の相続トラブルを回避することに繋がります。しかし遺言書というのも、法的に確実に有効なものとするには様々なルールが存在します。せっかく遺言書を残しておいても、それ自体がトラブルを引き起こすきっかけとなってしまうこともあるでしょう。

今回の記事では、遺言書作成のルールと共に、遺言書にまつわるトラブルについて考えていきたいとおもます。

遺言書作成上のルールとは?

昔は家族や地域とのつながりが強く、葬儀などの準備も周囲と協力をして進めていける環境がありました。最近は核家族化や晩婚化、熟年離婚など、ライフスタイルの多様化などもあり、事前に準備をしておけると安心、というような流れができてきています。
家族や周囲に迷惑をかけることなく最期を迎えるためには、最低限の知識を身につけ自身で取捨選択していく必要もあるでしょう。家族の負担を減らすために、自分の希望や要望を事前に決めて伝えておく、それが終活が広まるきっかけのひとつとなりました。
一度にすべてのことに取り組もうと思うとハードルが上がってしまうので、自分にとって優先順位の高いところから少しずつ始めていくことがおすすめです。
始めるきっかけは、退職や還暦など人生の大きな節目のほか、身近な人の死に接することで興味を持ち始めるケースが多いようです。
また配偶者や子供から、万一の段取りについて準備を提案してみるのも良いかもしれません。

今回は遺言書の作成について考えてみたいと思います。
遺言書が残されていることで防げる相続トラブルはたくさんあります。家族や親族は仲が良いので、遺言書作成の必要性を感じないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、ささいなことからトラブルに発展するケースが多いのが遺産相続なのです。遺産相続では法定相続よりも遺言による相続が優先されるので、残された家族や親族が争わないためにも、遺言を作成して相続トラブルを防ぎましょう。

遺言書には大きくわけて3種類あります。

・自筆証書遺言
自筆証書遺言はその名のとおり、自身で作成する遺言書のことです。書き方や用紙も自由に作成することができるので、思いついたらすぐに作成することも可能です。ただし、規定の条件を満たしておらず自宅などで保管していた場合、内容が無効となり法的な効力を持たない可能性のほか、死後も遺族に遺言書を見つけて貰えないということもあり得ます。
そのため自宅保管は手軽さと共にデメリットも大きいので、確実な相続のためにはリスクがあると言えます。

自筆証書遺言を選択する場合は、2020年7月10日より法務局で遺言書の保管してもらうことが可能になりました。この制度を利用すると、
①遺言書の形式的なチェックが受けられる
②データ保管してくれるため遺族は全国どこの法務局からも閲覧できる
③家庭裁判所の検認が不要になる
④相続人に遺言を保管されている旨が通知される
などの特徴があります。自宅保管よりも、手間と費用がかかりますが、相続人にとってもメリットがある制度になっています。しかし、法務局が自筆証書遺言の内容については審査をしてくれるわけではありません。

・公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場で公証人立ち合いのもと作成されます。費用が発生しますが、自筆証書遺言とは異なり条件を満たさず無効となる可能性は低く、確実な相続を行うためにはとても有効な遺言書と言えます。また、遺言書の保管場所も公証役場となるので、紛失や改ざんの心配もありません。

・秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言を混ぜ合わせたような特徴を持ちます。遺言書の存在を公にしたくない、誰にも内容を知られたくないという場合には、有効な方法です。作成した本人が遺言書を公証役場にもっていくことで、『自身で作成した遺言書である』ということを証明することができます。
しかし公証役場に預けたとしても、その内容を公証人がチェックすることはありません。そのため自筆証書遺言と同じく、内容の不備で無効になる可能性もありリスクが高い方法でもあります。

自身で遺言書を作成することに不安がある場合や、確実に法的な効力を持つ遺言書を作成したい場合には、公証人立ち合いのもと、公正証書遺言で遺言書を作成しましょう。不備のない遺言書を公証役場で保管してもらうことで、安心して自身で思い描いた相続を行ってもらうことが期待できるでしょう。

遺言書にまつわるトラブルとは?

遺言書を作成しておくメリットは、家族間のトラブルを回避したり、自身が希望する特定の相続人に財産を多く分配できる、相続人以外の人へも相続をさせることができるなどです。
遺言書は、種類によっては思いたったその日にも作成しておくこともできますが、手軽さと同時に注意すべきさまざまなポイントがあります。
ルールを理解し慎重に作成しておくことが大切で、準備をしておいた意味のない遺言書になってしまうことは絶対避けなければいけません。

考えられるトラブルとはどのようなものがあるのかいくつか見てみましょう。

・遺言書に記載されている内容が曖昧
例えば「土地を○○に相続させる」とだけ書かれていても、所在地の記載が無いと対象の財産の特定をするのに不十分と判断され、相続とは別に手続きが発生する場合もあります。資産価値が不明だったり、誰に何%ずつ相続させるのかが分からない場合でも無効になってしまうこともあります。
家族や親族なら細かく言わなくても分かってもらえる、という気持ちであいまいな遺言を作ると、結果家族に大変な迷惑をかけることとなり遺言書を作成した意味がなくってしまいます。

・作成した遺言書を死後発見してもらえない
遺言書を作成しておいても、死後見つけてもらえないというのは最悪な結果と言わざるを得ません。遺言書を作成した際には、存在だけでも信頼できる家族や友人などに伝えておけると安心です。

・遺言書に故人の意思が感じられない
本人が直筆で作成をしたと言われる「自筆証書遺言」である場合、起こりうるトラブルです。たとえば同居している家族が故人になりすまし遺言書を書いたり、認知症を患った家族に意思と違った遺言書を無理やり書かせるなどといったことが想定されます。亡くなった際に認知症がかなり進んでいる場合などは、残されている自筆遺言に対する遺言能力について争われることもあり、裁判所から遺言が無効と判断されるケースもあります。

・遺留分侵害額請求が起こる
遺言を残す場合、被相続人が自由に配分することができる遺産は遺留分を除いた分となります。遺留分とは、被相続人の法定相続人にあたる人たちに最低限保障される遺産の取得分のことです。
被相続人が、自身が自由に処分できない財産を遺言によって処分しようとすると、相続人らは不公平な遺言で納得できないとし、遺留分を求めて「遺留分侵害額請求」を起こすことができるのです。これにより、相続人同士の間で争いが起きることになります。
配偶者や子供などの近親者は、被相続人が亡くなったときには主張すれば必ず一定の財産が取得できるよう法律で守られています。そのことを理解した上で遺言書を作成することが、不要な争いを生むのを防ぐことに繋がるのです。

では、遺言書によるトラブルを避けるためにはどうしたら良いのでしょうか?
上記にあげたような遺言書のトラブルは、この3種類のうちの「自筆証書遺言」であることが大半であると言えます。
自筆証書遺言と秘密証書遺言については自身で作成することになり、仮に内容に不備があったとしても指摘をされず保管されることがほとんどでしょう。
公正証書遺言については、作成時から保管に至るまで専門家の元で行われるため、不備が発生する可能性は非常に低く遺言書を作成する意義も保たれます。

まとめ

遺言書のトラブルをなくすためには、まず遺言書の性質をよく理解することが大切です。また、身体の自由が効かなくなったり、認知症を患ったりすると、専門家の元でも遺言書の作成が難しくなることもあります。遺言書を作成する前には、財産の洗い出しや資産価値についてもできるだけ正確に把握する必要があります。遺言書作成は、思っている以上に労力を必要とするものです。思い立ったら、心身ともにできるだけ元気なうちに遺言書を作成することをおすすめします。

また、たとえ正しい遺留分の中で財産分与について遺言を残したとしても、内容を知った家族の中にはショックを受けたり、またトラブルを招く内容である可能性もあります。
できることならば、遺言書を作成する前に財産分与について家族に相談をしておけると、死後の遺言書トラブルというのは大きく減らすことに繋がりそうです。

終活は自身のためだけではなく残される家族へも心を寄せて行うことで、より充実した活動へと繋がるのではないでしょうか。

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