臓器提供や献体は、人の為になるとても崇高な行為です。
終活をおこなう中でしっかり自分をどうしたいかを考え、
検体などを希望する場合には、家族の同意を得たうえで、生前に意志表示をしておきましょう。

1.献体について

1)大学の医学部などへの献体登録

解剖実習は、医学部や歯学部の大学教育の中でももっとも重要な課程です。解剖実習のために自分の遺体を提供するのが「献体」です。
これは、無条件、無報酬で死後の体を提供するものです。
献体を希望する場合には、まず大学の医学部・歯学部や献体篤志団体などに登録します。登録は、各団体から取り寄せた申込書に必要事項を記入し、署名・捺印し、郵送すればOKです。後日会員証が送られてきます。
このとき大切なのは「家族の同意を得ること」です。たとえ献体登録していても、本人の死後、実際に実行するのは遺族です。遺族の中にひとりでも反対する人がいると、献体は実行できなくなります。
本人の崇高な意思を無にしないためにも、必ず家族の同意を得ておきましょう。

2)葬儀の後に遺体を移送

登録している人が死亡したら、会員証に記載されている連絡先に電話がいきます。遺体は通夜や葬儀を行ったあとに大学などに移送されます。葬儀などは通常と同じように行うことができますが、献体した遺体が遺骨になって返還されるまで、通常は1~2年、長い場合には3年以上かかることもあります。

2.臓器提供について

臓器を提供するには

1997年に「臓器移植法」が施行され、脳死状態における心臓、肝臓、肺など多く臓器の移植が可能となりました。これにより以前では救えなかった患者の命が少しずつ救えるようになってきました。もちろん、それを支えているのは臓器の提供者です。

公益社団法人日本臓器移植ネットワークによれば、
臓器移植とは「重い病気や事故などにより臓器の機能が低下した人に、他者の健康な臓器と取り換えて機能を回復させる医療」のことを言います。日本で臓器提供をまっている患者は約1万4000人であるのに対し、実際に移植を受けられる患者の数は年間およそ400人程度となっているといいます。臓器の提供を希望する場合には、そのことをあらかじめ意志表示しておかなければなりません。

臓器の移植に関する法律で決められている臓器提供に関する基準は、‘心臓が停止した死後’、‘脳死判定後’の2つです。

脳死判定後に提供可能な臓器は、心臓、肝臓、肺、小腸、賢臓、膵臓、眼球などがあります。
心臓が停止した場合は、肝臓、すい臓、眼球(角膜)のみです。
臓器移植法で決められていない、皮膚、心臓弁、血管、耳小骨、気管などの部位は、家族からの承諾があれば提供可能です。

臓器提供については、本人が希望してもしなくても、家族の承諾さえあれば、臓器提供することが出来ます。

その際に利用されるのが「臓器提供意志表示カード」、通称「ドナーカード」です。
「ドナーカード」は郵便局、保健所、市区町村役場、コンビニなどで配布されています。
提供希望者はドナーカードに必要事項を記入して、いつも身に付けておきましょう。カードには健康保険証などに貼るシールタイプもあります。
ご本人の意思で臓器提供を希望される場合は、健康保険証や運転免許証、臓器提供意思表示カードなどに記入しておくことで、ご遺族への意思表示になります。
臓器提供を希望している人が脳死や心停止状態になると、家族の同意を得て移植のための手術がおこなわれます。
この際に家族が同意しなければ移植は行われません。
なお、皮膚や血管などのいわゆる「組織」については、本人の意志を表示していなくても、家族の同意だけで提供できるものもあります。臓器の摘出は、死後すみやかに行われ、その後、遺体はできるだけ
きれいな状態になって戻ってきます。通夜や葬儀は通常の場合と同じように行うことができます。

まとめ

臓器提供と献体の大きな違いの一つが、臓器提供は「本人の意思が明確でなくても、家族の同意があれば提供可能」であるのに対し、献体は「仮に登録済みでも、二親等以内の家族が1人でも反対したら献体できない」ということです。それゆえ、献体を強く望む場合は、前もって家族の同意を取り付けておくことが重要となります。終活において、一度しっかり考えてみましょう。