終活という言葉が一般的に広く知られるようになり、その活動を取り入れたい、家族に勧めたいと思う方も多くいらっしゃるでしょう。終活の取り組みの中にはさまざまなものがありますが、遺産相続や財産の管理などについては、やはり遺言書を作成し残しておくというのが一般的です。
テレビドラマの中などで遺言書は、財産をたくさん持つ人や家族関係が複雑な人の相続争いのトラブルと共に登場することが多いものですが、実際にはごく一般的な家庭でも準備をしておいた方が良いと言えるでしょう。仲が良いと思っていた家族や親族間でも、一度お金が絡むとトラブルを生みやすいのが遺産相続なのです。そんな時に役立つのが遺言書の存在と言えるでしょう。しかしここでも、この遺言書の存在が争いの引き金となってしまうことも珍しくありません。
遺言書の内容がどうしても納得がいかないものだった、被相続人の意思に反する内容である、などたった一通の遺言書によって、家族の将来を大きく変える可能性もあるのです。そんな時には、どのような対応をとるべきなのでしょうか?

今回の記事では、準備されていた遺言書の内容をなかったことにするにはどのようにするべきなのか考えていきたいと思います。

遺言書の内容を無視することはできるの?

遺言書というのは本来、不要な争いを引き起こす火種を取り除いておく、被相続人の思いを明確にしておくなどの狙いがあると言えます。
遺言書が準備されていた場合、原則として遺言書通りに遺産を分割することが可能です。遺言書があることで、相続人により預金の解約をすることができたり、不動産の名義変更などができるケースもあります。
しかし、実際いざ遺言書を目にした時に、その内容が受け入れ難いものであるということも十分起こり得ることでしょう。
では、残されていた遺言書の内容が、自分にとって納得のいかないものだった時にはその遺言書をなかったことにすることは可能なのでしょうか?

遺言書は、故人の最後の意思表示とされるものです。そのため、できることならば最大限尊重されるべきというのが前提にあります。しかし方法としては、遺言書の内容に従わないという選択もあるのです。
遺産というのは、相続人や遺言書で配分を指定された人たちが相続することになります。相続が終わった後は財産の扱いも各自の自由となるため、遺産を相続する人すべての同意があれば、遺言書に記載された内容とは異なるかたちでの遺産分割も可能なのです。
しかしこれは、ひとりでも新たな相続配分に反対する人がいた場合実現しません。そのため、相続人の中に信頼関係がある場合やあまりにも遺言書の内容が理不尽だった場合などに限って行える対応と言えるかもしれません。

相続人の間で配分に偏りがあるなどの場合は、遺留分請求をすることもできます。
遺留分とは、被相続人の法定相続人にあたる人たちに最低限保障される遺産の取得分のことです。
遺言を残す場合、被相続人が自由に配分することができる遺産は遺留分を除いた分となります。
被相続人が、自身が自由に処分できない財産を遺言によって処分しようとすると、相続人らは不公平な遺言で納得できないとし、遺留分を求めて「遺留分侵害額請求」を起こすことができるのです。
配偶者や子供などの近親者は、被相続人が亡くなったときには主張すれば必ず一定の財産が取得できるよう法律で守られています。

遺言書の種類とルールを理解する

遺言書が無効となるケースは、遺留分請求の他にもあります。
遺言書によるトラブルを避けるためにはどうしたら良いのでしょうか?まず、遺言書について正しく理解する必要があります。遺言書には大きく分けて3種類あります。

 ・自筆証書遺言・・・自分自身で作成する遺言
 ・公正証書遺言・・・公証役場にいる公証人によって作成、発行され、保管をされる遺言書
 ・秘密証書遺言・・・遺言書は自分で作成し、公証役場に持ち込み保管してもらう遺言書
の3種類です。

自筆証書遺言と秘密証書遺言については自身で作成することになり、仮に内容に不備があったとしても指摘をされず保管されることがほとんどでしょう。
公正証書遺言については、作成時から保管に至るまで専門家の元で行われるため、不備が発生する可能性は非常に低く遺言書を作成する意義も保たれます。

遺言書の内容が無効となるケースとは?

◉遺言書に不備があり、法的に有効な遺言書として認められない
遺言書はさまざまなルールにのっとって作成する必要があり、その条件を満たしていないと法的に無効となり意味のない遺言書となってしまいます。思いついた時に自身で気軽に残しておきたいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、遺言書を作成する時には専門家に相談をするのがおすすめです。

◉遺言書に故人の意思がない
このようなトラブルの場合、本人が直筆で作成する「自筆証書遺言」であることがほとんどと言えるでしょう。
考えられる要因としては、たとえば同居している家族が故人になりすまし遺言書を書いてしまったり、認知症を患った家族に意思と違った遺言書を無理やり書かせるなどといったことです。亡くなった際に認知症がかなり進んでいる場合などは、残されている自筆遺言に対する遺言能力について争われることも想定され、裁判所から遺言が無効と判断される可能性もあります。

◉遺言書に書かれている内容があいまい
気心の知れている家族や親族なら、細かく書かなくても分かってもらえるだろう、という思いから財産についてあいまいな記入をしておくと、対象物を特定できないとされ、遺言書としての効力を持たないものになってしまう可能性があります。
例えば「宝石はきょうだいで分けてください」と書かれていても、どの宝石でそれらの資産価値も不明であり、誰にどの配分で相続させるのかといったことも分からないため、無効となってしまいます。
また、不動産なども「自宅」などという記載だけで所在地が不明確であった場合、対象の物件を特定するのに不十分だと判断されます。

このように遺言書を書いておけば良いというわけではなく、ルールをきちんと把握した上で作成することが、死後家族の間での不要な争いを生むのを防ぐことに繋がるのです。

まとめ

死後、家族や親族の間でトラブルを避けることを目的に遺言書を作成される方も多くいらっしゃることでしょう。遺言書には、基本的に財産の詳細や配分を記すのみになるので、それに至った経緯や自身の気持ちを伝えたい場合は、別にエンディングノートなどを用意しておくのもおすすめです。
他にも、感情が伝えやすいのは動画や音声などのデータを残しておくことです。最近はスマホなどで手軽に動画などを撮影することもできますので、家族への感謝の気持ちと共に相続への思いなどがあれば撮影しておくと、死後それを見た家族の中には気持ちが救われる方もいらっしゃるかもしれません。

またどうしても遺産を相続させたい人が家族以外にいる場合や、特定の財産を相続させたい人がいる場合なども遺言書はとても重要な役割を果たします。
そのようなイレギュラーなケースの場合、できれば遺言書を用意する前に家族に相談をしておくことがトラブル回避への何よりの近道と言えるでしょう。
死後、思ってもみないような遺言書に驚くことになれば、やはり感情的になりトラブルを引き起こしかねません。

遺言書の法的有効性をきちんと確保するとともに、遺言書の内容をなかったことにするような状況にならないように生前からしっかり準備をしておけると安心ですね。

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