終活を進めていくと、家族に確実に伝わるよう準備しておくべき情報というのが出てくるでしょう。例えば、遺産相続についてや銀行の口座情報などです。
それらの情報はできるだけまとまっている方が、家族にとっても分かりやすく、いざという時に焦る心配もありません。
何を準備しておけば良いか考えた時、おそらく初めに思いつくのは遺言書ではないでしょうか。遺産相続や財産の詳細については、遺言書の作成がおすすめです。
また最近は、エンディングノートというものも終活の広まりとともに取り入れる方が増えています。遺言書とエンディングノートとの違いはどのようなところなのでしょうか?
今回は、遺言書とエンディングノートの違いを考えながら、それぞれの有効的な使い方についてご紹介してきたいと思います。

遺言書とエンディングノートの違いについて

遺言書とエンディングノートの違いを考えた時にまず最初にあげられるのが、法的効力の有無と言えるでしょう。
エンディングノートには、基本的に法的効力はありません。書式やノートなどに何も決まりがないため、自由に書きたいこと、伝えたいことを残すことができます。
一方遺言書は、方式に従って正しく作成する必要があり、さまざまな手順を踏み完成させることで法的に有効なものとなります。


そのため、自分や家族に必要なのは遺言書なのかエンディングノートなのか、その両方なのかをきちんと理解して準備をしておくことで、終活がより充実したものになると言えるのではないでしょうか。
では、遺言書とエンディングノートの特徴を比較してみていきましょう。

遺言書とエンディングノートの特徴

遺言書の作成方法エンディングノートの作成方法
本人が決まった形式や書式で正しく書く必要があるパソコンデータやアプリ、ノートなど書式や内容など全て自由に
作成することができる

エンディングノートには法的効力がないので、基本的に全てが自由です。市販のエンディングノートを使うほか、パソコンやアプリなどを使用すると内容を更新する際も手軽にできます。
反対に、遺言書は法的効力を持たせるために、決められた形式を守り作成する必要があります。ルールにのっとり作成されていない遺言書は無効となり、作成をしておく意味がありません。また、遺言書には下記の3種類があります。
◆自筆証書遺言
 遺言者自身が遺言書の内容、日付、氏名を自筆し・押印し、自身で保管する形式。
◆公正証書遺言
 遺言内容を公証人が筆記・押印して遺言書を作成する形式。作成時に、証人の立会いが必要で作成した遺言書は公証役場で保管。
◆秘密証書遺言
本文は代筆可能で、署名・押印は自身で行い作成をしたものを、公証役場で自身の遺言であることを保証してもらう形式で、保管は自身で行う。

記載する内容の違い

           遺言書に記載する内容         エンディングノートに記載する内容
・誰に何の財産を相続させるのか 
・作成した日付         
・署名、捺印           
・葬儀や供養の希望
・自身のプロフィールや友人関係、連絡先
・終末医療や延命治療、介護の希望
・財産について
・ペットの引き取り先について       など

遺言書に記載する内容は財産分与や相続についてです。遺言書の内容や記載方法については、自信のない場合には専門家に相談し作成するのがおすすめです。正しく作成し、きちんと法的効力のある遺言書を準備しておきましょう。
一方エンディングノートには、上記に記載した以外にも家族や友人などに伝えておきたい項目を自由に記載しておきましょう。感謝の気持ちや、面と向かっては言いづらいことなども記入しておくと良いかもしれませんね。
エンディングノートの準備を進めておくことは、急に体の自由が利かなくなったり、寝たきりになってしまった場合にも、きっと家族の助けとなることでしょう。

費用の違い

エンディングノートは、自宅にあるノートやスマホ、パソコンを使う場合費用はほぼかかりません。お気に入りのノートを探して購入したり、アプリなどで管理する場合は数百円から数千円ほどかかることもあります。
一方遺言書に関しては、自宅などで自筆証書遺言を作成する場合は費用はかかりませんが、正証書遺言や秘密証書遺言を作成する場合には数万円ほどの費用が必要になります。遺言書を作成する場合には、不備なく確実に法的効力を有効にするため、公正証書遺言をおすすめします。

更新、見直しの手軽さ

遺言書の場合エンディングノートの場合
記載内容に変更がある場合、
公正証書遺言や秘密証書遺言は費用をかけ新しく作成し直す必要あり
好きなタイミングで自由に加筆・修正が可能

遺言書やエンディングノートを用意してから、実際にそれが必要となってくるのには長ければ数年〜数十年かかることになるでしょう。その場合、記載されている内容に変更があったり、気持ちの変化があってもおかしくありません。そのような状況になった時、手元で管理をしているエンディングノートであれば好きなタイミングで見直すことが可能です。
一方、遺言書の場合は種類によっては再び専門家の元作成し直す必要があり、費用も再度必要となってきます。

遺言書とエンディングノートの使い分け

ここまで遺言書とエンディングノートの違いについてご紹介してきましたが、上記にも記載したように二つの大きな違いは法的効力の有無です。
遺言書には法的効力がありますが、エンディングノートにはありません。つまり、遺言書に書いた内容は基本的に自身の死後、法的な効力を持ち実行されることになりますが、エンディングノートはあくまで情報のほか、葬儀などの希望や要望をまとめたものということになり、遺族の判断により実行されるとは限らないということです。

遺言書は内容に不満がある人が遺言書を故意に隠したり破棄したりした場合、相続の資格を失う可能性があります。また、エンディングノートに財産分与や相続について記載しておくと法的効力を持たないため、家族や親族間でのトラブルに発展する可能性があります。
遺産相続はどうしても揉め事が起こりやすい側面を持っています。自分の死後も家族や親族が揉めることないよう、相続についてしっかりと考えておくことが大切です。
そのため、相続についてはきちんと遺言書を作成し、そのほかの希望や伝えたい気持ちなどをエンディングノートに記載して、役割によって遺言書とエンディングノートの使い分けをすることをおすすめします。

また、死後に初めて遺言書やエンディングノートを見た家族が内容に驚くことが無いよう、記載内容についてはできるだけ事前に家族に話や相談をしておくことがトラブルを回避する近道でしょう。
葬儀や埋葬方法などについても、本人と家族の考え方の間に大きな隔たりがあると、家族にとって大きな負担となることもあるでしょう。

まとめ

エンディングノートはその存在を認識していれば、家族は亡くなった直後や生前でも確認することができます。臨終後というとのは思っている以上に、短い時間の中でさまざまな手配や手続きが必要なもので、そんな時に故人の希望を把握することができていれば、家族や親族にとって非常に助けとなることでしょう。
一方、遺言書を確認する作業というのは、死後相続人全員が揃った状態でしか開封することができません。

このように、二つの特性は亡くなった直後から違いが出てきます。
人の人生はいつ終わりを迎えるのかは誰にも分かりません。備えがないと、大切な家族や友人へのメッセージを届ける術はなくなってしまいます。亡くなったあとの家族の負担などを考え、少しずつ遺言書やエンディングノートなどの準備を進めておくと、自身の歩んだ人生を振り返りながらその先の人生をより楽しいものにするためのヒントが見つけられるかもしれません。

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