終活には様々な項目がある中で、もっとも重要と言えるものは財産の管理と言っても過言ではないでしょう。
お金に関することは残される家族にとっても最大の関心事項でもあり、大切な財産をトラブル無くもれなく受け継いでもらうには、準備が大切です。
自身の財産を見える化しておく「財産リスト」を作成することで、相続の準備とともに現在の財産状況を把握することができ、これから先のご自身の人生を充実させるためにも非常に役に立ちます。

今回の記事では、相続や遺言といった視点とともに、老後の資産把握にも大変役立つ財産目録についてご紹介いたします。

財産目録とは?

財産目録とは、簡単に言うと所有している財産を一覧としてまとめた相続財産のリストです。
重要なのは、預金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産についてももれなく記載することです。
財産目録には、相続財産の名称だけでなく、種類、数量、所在、価額など特定できるような情報を書き出します。すべての財産を洗い出して細かく記載することで、相続財産の内容を把握できるようになっています。

◉プラスの資産
不動産、土地、預貯金、有価証券、投資信託、貴金属、骨董品、自動車、ゴルフ場会員権 など
◉マイナスの財産
借金、住宅・自動車ローン、各種未納税金、未払いの医療費、保証人の立場 など

生前に財産目録を事前に作成し、必要に応じて加筆修正、削除を行い随時メンテナンスしていくと、財産相続をする際非常にスムーズに行えるでしょう。

財産目録の必要性とは?

財産目録を作成することの大きなメリットは、資産を見える化できることです。
所有している資産をきちんと把握できていると、遺産分割を公平かつスムーズに進めることができます。また、借金などマイナスの財産を抱えている場合は、相続を考えるためのスタートラインに立ち、相続するのか放棄するかなどの判断材料にすることができます。

相続で財産目録が必要とされるのは、このような状況などです。
・生前、ご自身で遺言書作成のために作成する
・遺族や相続人が、亡くなった人の財産を把握するために作成する
・法律上の遺言執行者が、財産を把握するために遺言執行前に作成する

遺族や相続人などが財産目録を作成するのには、相続税の申告や遺産相続の協議の際などに財産が把握できていないと進められないからです。
ご自身が亡くなった後に全ての遺産を把握する作業は手続きなども多く、非常に時間と手間がかかる作業と言えます。相続が目的で生前に財産目録を作成するのであれば、それは残されるご遺族の負担を軽減するという上で非常に意味のあるものと言えます。

財産目録を作成するメリット

①これからの人生設計に役立つ

ご自身の財産を正確に把握することによって、遺言の内容を検討できる材料やきっかけとなります。
誰にどの程度の財産を受け継ぎたいのかを検討し見越した上で、これからの老後の生活のライフプランが立てやすくなります。今後必要であろう医療費や税金等も見える化することで、今後のお金の流れをシミュレーションできます。
具体的に何にどのくらいの費用が必要で、どれだけのお金が残せるのか、それらを認識することでこれからの人生の選択肢や、終活を進める上での優先事項なども明確にすることが期待できます。

また相続税の申告など事務手続をする際に、専門家などへの相談がしやすくなります。

遺産相続の公平性を保てる

生前に細かな調査などを済ませ、事前に手続を済ませておくことで、死後の遺族や相続人が行う手間が大幅に削減されるでしょう。
またそれを元に、被相続人であるあなたご自身で相続手続きの計画を進めることができます。
これにより遺産分割協議をより公平なものとする手助けとなるでしょう。

遺産相続は遺族間で火種となりかねない案件です。
たとえば、相続人の誰か一人が代表で財産について調査を行い、主導権を握った状態で遺産相続について進めると、
本当にすべての財産について話合いが行われているのかなどの疑問を持たれて、争いとなってしまうこともあるでしょう。
こうしたとき、生前に作成された財産目録が存在すると、全ての財産について相続人が正確に把握しながら進めることができます。

③相続放棄をする判断材料にできる

財産の全体像を見える化することで、マイナスの財産が多い場合には、相続人は相続放棄を行うための判断材料とすることができるのも大きなメリットのひとつです。
相続放棄の申し出は家庭裁判所に対して、相続の発生を知った日から3か月以内に行います。しかし、生前に財産の整理が行われていなかった場合、3か月の時間のなかですべての相続財産を把握するのは非常に骨が折れる作業です。
3ヶ月以内に財産目録が作成できない場合、相続放棄の延長を申し立てることも可能ですが、
万が一、正確な財産内容を確認せずに相続をしてしまい、返済困難なほどの負債がのちに判明した場合には、おおきな負担を背負うことになるため、事前に相続財産を把握しておくことは非常に重要と言えます。

財産目録の作成方法

財産目録には、決まった書き方やフォーマットはありません。
もしご自身で作成するのに不安がある場合や書き方に迷うことがあれば、専門家などに相談するのもおすすめです。

財産目録には、主に以下の項目を記入します。
・財産の種類
・金融機関や住所
・金額や数量

●財産の特定をしやすくする
預貯金の場合は、銀行名や口座番号金額を、株や投資信託の場合は、証券会社名、銘柄、株数を記載します。
土地や不動産の場合は、登記事項証明書などに記載されている正確な住所や地番、面積、評価額などを記入します。
●購入時の価格と、その後の評価額などが分かれば記載しておく
また、宝石や美術品などは、それがどのようなものか分かるように具体的な内容を書いておきます。
付いている宝石の種類や、作者名、ブランド名など分かる範囲で情報を残しておくと、より把握しやすくなります。
また、相続税の申告で必要なのは相続税評価額です。つまり、財産の持ち主の死亡時点での評価額が必要となります。購入金額のほか、その後に価値を試算した場合はその時期と評価額を記載しておきましょう。
●その他伝えておくべきこと
例えば共同名義になっている不動産や、相続するとマイナスの負債も引き継いでしまうため、プラスの資産だけでなく、マイナスの負債もしっかり記入してください。

裁判所のウェブサイトやその他のサイトにも財産目録の書式テンプレートがありますので、パソコン上などでデータ管理をするのもおすすめです。その際には、美術品や宝石などの財産は写真なども添付しておくとより把握がしやすくなるでしょう。

財産目録を作成するときの注意点

・定期的な見直しを
生前にご自身で財産目録を作成した場合は、定期的に見直しを心がけましょう。定期預金の解約や不動産の売却などで財産に変動が生じることもあります。
状況に応じて見直しをしないと、せっかく作成をしておいても相続のときに再度洗い出しが必要となってしまい、遺産相続にも影響があるかもしれません。

・評価額が重要
生前から財産目録を準備しておくことで手続等の手間が省けたり、遺産分割協議を行いやすくなったりするというメリットがあります。そこで、注意しておいていただきたいのが「評価額」です。
特に、建物や土地といった不動産は、相続税の申告では、路線価や固定資産税評価額を基準に評価します。この評価額は通常、公示価格の5割から8割程度であることが多くなります。一方、実際の取引価額は、物件により公示価格よりも高かったり低かったり様々です。つまり、相続税で申告する金額と実際の取引価額に差額が生じる場合があるのです。
実際の資産価値である取引価格と相続税評価額に差がある状態で、相続税評価額を書いた財産目録をベースに遺産分割の協議を行うと、不公平が発生する可能性もあります。
財産目録を作成する際には、相続税評価額の他、実際の取引価額も記載しておくと安心です。

名義預金の管理に注意
名義預金とは、口座の名義は子や孫であっても、実質的には親や祖父母が管理している預貯金のことをいいます。
親族名義で口座を作成しても、通帳や印鑑を管理しているのが被相続人である場合、その預貯金は名義人のものではなく、被相続人のものとなります。相続税の課税対象ともなるので、注意しましょう。

まとめ

・財産目録の作成は、老後のライフプランを計画するきっかけとして非常におすすめ
・死後、残された家族への負担を軽減するために財産ごとに正確な情報を記載すること
・財産目録を作成することで、相続争いなどを避けることにも役立つことが期待できる

保有している財産が少なければ、財産目録の作成もそれほど手間の心配はありません。しかし、複数の不動産を所有していたり株式投資を頻繁に行っている場合などは、終活の中で重要な項目と言えど、財産目録をつくるのは重荷かもしれません。
体力面でも負担と感じる場合には、専門家への相談も検討しましょう。

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