人生の最期を迎えるにあたり、あらかじめ身じたくを整えておくための終活。その活動はそれぞれの思いにより、多岐にわたります。その中でも多くの人が、残される家族に向けて準備をしておく必要があると考えるのが財産の整理や相続についてではないでしょうか。
お金の問題というのは、ささいなことからでもトラブルを生みやすい性質のあるものです。そこで相続人の間で無駄な争いが起こることを避けるために有効と言えるのが、遺言書と言えるでしょう。
遺言書とひとことで言っても、法的な効力をきちんと持たせるためには色々と気をつけなければならないことがあります。また、一度遺言書を作成すると安心をしてしまい、そのまま数年放置をしてしまっていることもあるかもしれません。そもそも遺言書には有効期限というものはあるのでしょうか?

今回の記事では、遺言書の作成する必要性や有効期限などについてご紹介していきたいと思います。

遺言書を作成する目的とは?

終活が浸透し始めた当初、その活動は主に、残される家族の葬儀やお墓などの手配をする際の負担を減らしたい、という配慮から行われることが多かったかもしれません。
しかし最近は、残される家族のためだけではなく、自身の人生を振り返り、残りの人生をより良く生きたいという思いから多くの人が取り入れる活動となっています。
以前はタブー視されることも多かった、死というものを受け入れ認識しそのための準備をすることで、今自分が置かれている状況や身の回りにあるものの価値を改めて認識することができる。そういったことも、多くの人が終活を行う要因となっているのではないでしょうか。

終活を行うメリットをいくつか考えてみましょう。

①残される家族の負担を減らし、安心してもらうことができる
自身が亡くなった後、身の回りの整理をすべて家族に託してしまうと非常に大きな負担となるのではないでしょうか。また、残された家族には多かれ少なかれ相続が発生することでしょう。
生前、元気なうちにご自身の財産の洗い出しをしっかりと行い、どのくらいの資産価値があるのか、誰にどれだけの財産を相続させるのかを明確にしておくのは、残される家族へのとても大切な配慮と言えるでしょう。
終活にも体力が必要です。元気なうちから終活を行うことで、残された家族が遺品整理や相続で困らないように心がけましょう。

②自身の想いを家族や友人に伝える
例えば今まで思ってはいても口では言えなかったことを、終活を通して気持ちをまとめ文字にすることで、家族や友人に想いを伝えることができます。死を意識して考えた時、面と向かって言いづらいことも、エンディングノートなどを使うと素直な気持ちを残すことができるかもしれません。
終活は、家族のために行うのはもちろんのこと、自身が悔いのない人生を終えるための手助けにもなります。

③これからやりたいこと、やり残したことに気づくことができる
終活という活動を進めていくと、必然的に自身の人生を振り返る時間を持つことになるでしょう。最期に向けて、自身の人生をセルフプロデュースすることも十分可能です。これまでの人生でやり残してきたことはないか?とを見つめ直すことで、具体的な目標や必然性が見えてくるかもしれません。

そしてこれらの終活を進める上で避けて通れないのが、財産の管理になるでしょう。
ここからの人生、こんな日々を過ごしていきたい、家族に残しおきたいものがある、葬儀や埋葬方法に希望があるなど、これからのお金の流れもきっちりと把握できていると安心です。
まずは自身が保有している財産についてしっかりと把握しましょう。
 ・預貯金
 ・所有不動産
 ・加入している生命保険
 ・株や投資信託など
 ・貴金属類

これらの洗い出しをした上で、しっかり資産価値も把握しておく必要があります。
さらに、所有しているプラスとなる財産だけでなく、借入金、ローンなど負の遺産についても明確にしておくことが大切です。

所有する財産が把握できたら、それをどのような配分で相続するのかを決めておけると安心です。死後、被相続人の意思がはっきりしない中で相続を進めると、金額の大小に関わらず、どうしてもその取り分を巡りトラブルに発展することも考えられます。
そのため財産の配分など相続に関することは、想いを記しておくエンディングノートに記載するのではなく、
きちんと遺言書の形で記載して残しておく方がトラブル回避の観点から適切でしょう。

遺言書を作成する時に注意することは?

遺言書は種類は大きく3つに分けられます。

・自筆証書遺言
自筆証書遺言はその名のとおり、自身で作成する遺言書のことです。書き方や用紙も自由に作成することができるので、思いついたらすぐに作成することも可能です。ただし、規定の条件を満たしていない場合、内容が無効となり法的な効力を持たない可能性もあります。
手軽さと共にデメリットも大きいので、確実な相続のためにはリスクがあると言えます。
・公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場で公証人立ち合いのもと作成されます。費用が発生しますが、自筆証書遺言とは異なり、条件を満たさず無効となる可能性は低く、確実な相続を行うためにはとても有効な遺言書と言えます。また、遺言書の保管場所も公証役場となるので、紛失や改ざんの心配もありません。
・秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、自筆証書遺言と公正証書遺言を混ぜ合わせたような特徴を持ちます。遺言書の存在を公にしたくない、誰にも内容を知られたくないという場合には、有効な方法です。作成した本人が遺言書を公証役場にもっていくことで、『自身で作成した遺言書である』ということを証明することができます。
しかし公証役場に預けたとしても、その内容を公証人がチェックすることはありません。そのため自筆証書遺言と同じく、内容の不備で無効になる可能性もありリスクが高い方法でもあります。

自身で遺言書を作成することに不安がある場合や、確実に法的な効力を持つ遺言書を作成したい場合には、公証人立ち合いのもと、公正証書遺言で遺言書を作成しましょう。不備のない遺言書を公証役場で保管してもらうことで、安心して自身で思い描いた相続を行ってもらうことが期待できるでしょう。

無効になる遺言書って?

確実に法的な効力を持つ遺言書を作成したい場合には、公正証書遺言を選択するのが望ましいのは分かりましたが、
では実際に無効とされる遺言書とはどんなものなのでしょうか?

自筆証書遺言書で無効とされるもの
 ・パソコンで作成されている
 ・録音で作成されている
 ・日付の記載がない
 ・遺言者以外が書いた
 ・署名がない場合や、他人が署名した
 ・相続する財産の内容が不明確である

公正証書遺言で無効とされるもの
 ・公証人が不在の状態で作られた
 ・遺言能力がない
 ・口授がなく身振りなどで伝えた
 ・証人が不適格だった

などがあります。

また遺言書に有効期限というものは存在しません。
たとえ被相続人が10年、20年以上前に書いたものでも、形式が有効であれば問題ありません。
しかし、相続人が変わった場合や財産に変化があったときなどには、遺言を書き換えることが必要です。
相続させるつもりだった不動産などを売却したしまった場合などは、忘れずに遺言の書き換えを行いましょう。遺言書を作成した場合、毎年内容を確認するのが安心です。
新しい遺言書が作成されていない、または発見されなければ、何十年前に作成されていたとしてもその古い遺言書がそのまま有効となります。

まとめ

・終活の中で財産の洗い出しは非常に重要であり、家族の負担を減らすことにもつながる
・財産分与についての詳細はエンディングノートではなく、公正証書遺言を作成するのがおすすめ
・遺言書に有効期限はないが、作成後も定期的に内容を確認すると安心

一度作成した遺言書がたとえ有効だとしても、古すぎる遺言書はさまざまな問題が発生することがあります。
たとえば、相続人がすでに亡くなってしまったいたり、遺言書に記載した預貯金をすでに使ったしまっているなどということが考えられます。
このようなトラブルを避けるためにも、遺言書を作成したら定期的に見直しをし、必要であれば書き換えを行いましょう。

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