終活を進める中で、残された家族に自分の意思を明確に伝えるために非常に有効な手段のひとつが、遺言書の作成です。
遺言書は死後の遺産相続の方法、遺言書の指示を誰に実行してほしいかなどを明記した、法的な書類のことをいいます。法的に効力を持たせるためには規定通りに文章を作成する必要があり、方式に反する遺言書は無効とみなされることもあります。
専門的な知識が必要となる遺言書ですが、遺言書の内容は大きく分けて、法的効力を与えられる法定遺言事項と、
法的効力を有しない付言事項に分けることができます。
法定遺言事項にあたる内容は、相続分の指定や遺産分割方法の指定、子どもの認知などです。これらは、遺言書に記載することで法的効力が認められます。
一方付言事項とは、法的効力を持たず遺族へのメッセージや自身の思いを伝えることを目的として遺言書に記載するものです。
今回の記事では、遺言書の付言事項の役割や作成方法などについてご紹介していきたいと思います。
法定遺言事項と付言事項の違いとは?
遺言書とは、自分の死後に遺産をどのように相続させるかについての意思表示をしたものです。遺言書として法的に効力を持つには、民法が規定する条件を満たしている必要があります。
遺言書には大きく分けて二つの項目があります。その違いについて詳しくみていきましょう。
・法定遺言事項
遺言書に記載することにより、法的な効力が発生する事項のことを指します。
遺言書に記載すればなんでも法的な効力が認められるわけでは無く、 法的な効力が認められる事項は限定されており、それを法定遺言事項と言います。
・遺産をどのように分けるか
・遺言執行者を誰にするか
・子供の認知
・未成年後見人の指名
・祭祀継承者の指名
・生命保険受取人の指名
などがあります。
法的遺言事項は被相続人の意思だけで法的拘束力を持たせることのできる行為であり強い効果を持ちますが、遺言書に記載をしておけば全て認められるというものでもありません。
・付言事項
付言事項は法的効力は有しません。法定遺言事項以外の内容を指し、例えば家族や友人への感謝の気持ちや遺言分割の動機、葬儀の希望や納骨方法などを記載します。
付言事項は法的効力が関わらない分、遺言者の思いを遺族やお世話になった人にあてて伝えることができ、自由に作成できるのが特徴です。
付言事項は、法定遺言事項のように定型文のような決まり事や堅苦しい文章を使う必要はありません。思った通りのことを自由に文章にすることで、遺言者自身の想いを伝えることができます。
そのため、法定遺言事項で伝えた内容についての説明や想いなどを伝える役割も果たしてくれます。それにより、相続トラブルを未然に防げることもあるでしょう。
例えば、遺言書の相続分の内容が法定相続分と異なっていた場合や相続人以外に相続をする場合は、相続人の中で遺産分割のトラブルになりかねません。
そこで付言事項にて自身の想いを明確ににしておくことで、トラブルになる危険性を少しでも抑えることができます。
このように、遺言書は法定遺言事項と付言事項とのふたつに分けることができます。法的に確実に伝えておかなければいけないこと、自身の想いとして伝えておきたいこと、それぞれ明確にした上で遺言書の作成をしましょう。
付言事項を書く際に気をつけたいこと
付言事項は必ず遺言書の中に記載しなければいけいものではありません。法定遺言事項に加え、伝えておきたい気持ちがあれば書き足すことができるというものです。
付言事項だからと言って、自身が想っていること、感じていることを何でも書いてしまうと、時には遺族の感情をかき乱してしまうこともあるかもしれません。基本的に遺言書を遺族が確認するのは臨終後ですから、遺言書を確認したあとに真意を本人に確認することはできません。
付言事項を書くときにはいくつかの注意点を心がけると良いでしょう。
①否定的なことや文句はできるだけ書かない
付言事項に書くのは感謝の気持ちや財産分けの理由等を中心にして、親族を否定するような言葉は書くべきではないでしょう。
その付言事項を読んだことで、新たな火種となりトラブルを引き起こす可能性もあります。付言事項は、基本的に遺産相続などのトラブルを未然に防ぐ目的で書くものであり、親族に対する文句などを伝える目的のものではありません。
残された遺族のことを思い、誰かを非難するような内容は避けるべきでしょう。
②内容はできるだけ簡潔に
付言事項の内容が多くなりすぎると遺言書の趣旨が分かりにくくなってしまうこともあります。法定遺言事項と内容が重複しないよう注意しましょう。
遺言書を読んだ時に、遺言者の気持ちを受け止めてくれる相続人であると思えれば、付言事項には「ありがとう、仲良くやってください」の一言で十分気持ちが伝わることもあるでしょう。
家族や友人に伝えておきたいことや想いがたくさんある時には、エンディングノートを活用することがおすすめです。
エンディングノートに書ける内容には制限がなく、何でも自由に書くことができます。
資産についても、預貯金や保険、ネット証券についてなど詳細を記載しておくことをおすすめします。
その他にも
・葬儀やお墓の希望、要望
・医療介護の希望、延命措置の有無など
・携帯やWEB上でのIDやパスワード
・ペットについて
・家族、友人へのメッセージ
など、エンディングノート上には自身の思うことを全て記載しても何ら問題ありません。
もちろん家族に知っておいて欲しい事項だけをピックアップして記載するだけでも、残された家族は故人の想いを知ることができるでしょう。
しかし、エンディングノートには法的な効力はありませんので、遺言書とエンディングノートの使い分けには注意が必要です。
まとめ
・遺言書には法的な効力が認められる法定遺言事項と、法的な効力を持たない付言事項とに分けられる
・遺言書は遺産相続を円滑に進めるものとして捉え、それ以外の自身の要望や想いなどはエンディングノートを
作成しておくことがおすすめ
遺言書を作成するうえで大切なことは、遺言書作成者本人の想いや考えが明確に相続人に伝わることです。基本的に文章で伝えることになりますので、言葉の選択には注意が必要です。
遺言の本文とされる法定遺言事項には遺言事項しか記載することができませんが、法的な効力のない付言事項を同時に記載することで、争いやトラブルを未然に防ぐこともあるかもしれません。
また、遺言書は法的に効力を発揮するかどうかが非常に重要と言えるでしょう。しっかりと法的効力のある遺言事項を記すことが大切です。法定事項である項目は、相続に詳しい専門家に相談することで遺言書に書くべきものをしっかりと判別してくれるでしょう。法的効力のある遺言書を作成するなら、専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。
また遺言書やエンディングノートを作成した場合、できるだけ毎年内容を確認するようにしましょう。保有している財産の価値が変わったり、相続人となる人が変わっている場合などもあるかもしれません。
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