(本記事の作成日:2021年10月4日)

弊社の終活コラム「自分に合う介護施設はどれ?」にて書いたとおり、介護施設には多くの種類があります。

介護度や自身の身体的・経済的状況等、様々な事情を考慮して決めていくわけですが、中でも、今回紹介する「特別養護老人ホーム(通称:特養)」は入居希望者が多く存在し、入居待ちが生じるほどです。

本日の記事では、特別養護老人ホームについて、どのような方が利用できるか、費用はいくら必要か、といったことについてお伝えしていきます。

特別養護老人ホームとは

特別養護老人ホームとは、常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を提供する介護施設のことです。

介護老人福祉施設とも言い、社会福祉法人や自治体が運営する「公的施設」の1つとされています。

また、特別養護老人ホームのうち、入所者の定員が29人以下の施設を「地域密着型特別養護老人ホーム(地域密着型介護老人福祉施設)」といいます。

特別養護老人ホームのメリット

特別養護老人ホームに入居するメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

1.費用が安い

特別養護老人ホームは、入居時に入居一時金(入居金)が不要であり、他の介護施設と比べて費用を安く済ませられる点は一番のメリットといえます。また、後述する費用(居住費や食費)についても、負担限度額が設定されており、負担が軽減されるよう配慮されています。

2.終の棲家にできる

特別養護老人ホームは原則、人生の最後まで入所できるようになっています。そのため、入所期間に制限がありません。

3.専門ケアが受けられる

特別養護老人ホームは、専門のスタッフに関する配置基準があり、24時間専門スタッフによるケアを受けられます。

特別養護老人ホームのデメリット

一方、特別養護老人ホームに入居するデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

1.入所待機者数が多い

前述したように、特別養護老人ホームへの入所は費用面などによるメリットが大きく、非常に希望者が多い介護施設の種類になります。そのため、入所待ちをしている入所待機者が多数に及び、入所するまでに何ヶ月、あるいは年単位で待つ可能性があります。厚生労働省のデータ「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」によると、2019年4月時点で全国に29.2万人もの特別養護老人ホーム待機者がいる状況です。

2.要介護3以上しか入所出来ない

介護保険法の改正に伴い、平成27年4月以降、原則として要介護3以上の方しか特別養護老人ホームに入所できなくなりました。

この理由としては、特別養護老人ホームの入所を希望しているにもかかわらず、在宅生活を続ける重度の要介護状態の方が優先して入所出来るようにするためとなっております。

ただし、要介護1・2の方であっても、例外的に入所が認められるケースが存在します。詳しくは次の項目「利用条件は何があるのか」で詳しくお伝え致します。

利用条件は何があるのか

特別養護老人ホームに入所するためには、介護保険法に規定がある次のいずれかの条件を満たす必要があります。

1.介護保険の第1号被保険者(65歳以上)で、要介護度3以上の人

2.介護保険の第2号被保険者(40〜64歳)で、要介護度3以上の人(特定疾患によるもの)

ここにある「特定疾患」とは、介護保険法に列挙されている以下の16種類の病気を言います。

がん(末期)

関節リウマチ

筋萎縮性側索硬化症

後縦靱帯骨化症

骨折を伴う骨粗鬆症

初老期における認知症

進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病

脊髄小脳変性症

脊柱管狭窄症

早老症

多系統萎縮症

糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症

脳血管疾患

閉塞性動脈硬化症

慢性閉塞性肺疾患

両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

3.特例により入所の必要性が認められた要介護1・2の人

ここにある、「入所の必要性」が認められる場合とは、以下の4つのいずれかに該当する場合をいいます。

認知症で、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること

知的障害・精神障害等を伴い、日常生活に支障を来すような症状等が頻繁に見られること

深刻な虐待が疑われること等により、心身の安全・安心の確保が困難な状態であること

単身世帯等家族等の支援が期待できず、地域での介護サービス等の供給が不十分であること

実際に入所できるか否かは、施設ごとに入所判定委員会が開かれ、入所の可否について判断されます。

入所する際の費用

特別養護老人ホーム入所に必要な費用は、入居者本人と扶養義務者(妻・夫・子どもなど)の負担能力によって設定されます。また、収入や年金に応じて負担額が軽減される制度も設けられております。

大きく分けて以下の4項目で構成されています。

1.居住費

居住費は、家賃にあたる費用のことです。

費用負担額(30日計算)は、特養の形態・入居者本人の収入や世帯収入により、以下のようになります。

ユニット型個室     24,600円~60,180円

ユニット型個室的多床室 14,700円~50,040円

従来型個室       9,600円~35,130円

多床室         0円~25,650円 

2.食費

食費(1日3食)は特養の形態による区分は無く、入居者本人の収入や世帯収入により、9,000円~43,350円(30日計算)となります。

3.日常生活費

日常生活費とは例えば、理美容代や病院までの交通費、日用品・嗜好品の購入代金などです。これらは原則、実費負担となります。良く質問されるものとして、紙オムツの代金が含まれるか否かということがありますが、紙オムツは施設側の負担となり、入居者が負担することはありません。

4.施設サービス費

施設サービス費とは、食事や入浴の介助からアクティビティ、レクリエーション、リハビリなどの、施設内で受けたサービスへの対価として払う費用のことです。部屋のタイプや要介護度によって、以下のように金額が変わります(30日計算)。

部屋のタイプ:多床室・従来型個室

要介護度:要介護1 17,190円

     要介護2 19,230円

     要介護3 21,360円

     要介護4 23,400円

     要介護5 25,410円

部屋のタイプ:ユニット型個室・ユニット型個室的多床室

要介護度:要介護1 19,560円

     要介護2 21,600円

     要介護3 23,790円

     要介護4 25,860円

     要介護5 27,870円

5.介護サービス費

介護サービス費は、人員・体制やサービスの充実に応じて追加される施設介護サービス費のことを言います。医療や看取りに対応するための人員配置に対する費用などがこれにあたります。入居者の利用頻度や施設によって費用はまちまちです。

入所を検討される方の相談先

本コラム「自分に合う介護施設はどれ?」でもお伝えしましたが、介護施設選びの相談先は主に次の3つがあります。改めてご紹介します。

地域包括支援センター

地域包括支援センターとは、介護・福祉に関する高齢者の相談窓口のことです。高齢者が住み慣れた地域で生活できるよう、介護サービスや日常生活支援などの相談に応じており、介護保険の申請窓口も担っています。「高齢者の何でも相談所」と言える機関です。

地域包括支援センターは、社会福祉法人、社会福祉協議会、医療法人、民間企業、NPOなどが市町村から委託を受けて運営しています。各センターには、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーの3つの専門職、またはこれらに準じる者が必ず配置されています。

居宅介護支援事業所

これは、介護認定を受けた人に対して、ケアプランの作成や、介護サービスを受けられる事業所の紹介をおこなう事業所のことです。よく地域包括支援センターと混同されますが、居宅介護支援事業所の業務は「高齢者のケアプラン作成と介護事業所の紹介を行うこと」であり、高齢者の相談を広く受け付ける地域包括支援センターとは異なります。

居宅介護支援事業所にはケアマネージャーが常駐してます。介護認定を受けた方であれば、この事業所のケアマネージャーに相談することも一つです。

民間の紹介センター

上記の2つの機関の他、介護施設の紹介を事業として行っている企業があります。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネージャーであっても、必ずしも施設に詳しいとは限りません。民間の紹介センターの場合、情報量が多く、見学同行など、手厚いサービスを受けられます。ただし、利用料が必要になりますので、事前に内容をしっかりと確認するようにしましょう。

まとめ

・特別養護老人ホームは費用が安い、ケアが手厚いなどのメリットがある一方、入居待機者数が多いなどのデメリットもある。

・費用面では、入居者本人や世帯の収入や要介護度によって自己負担の限度額が分かれている。

・特別養護老人ホームを検討する際の相談先は、地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・民間の紹介センターが代表的なものである。

特別養護老人ホームへの入所を検討したい、詳しい話を聞いてみたいという方、名古屋市熱田区の合同会社SBNに一度ご相談下さい。介護施設選びのサポートも行っております。お気軽にご相談お待ちしております。

参考サイト

公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/index.html

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/index.html

NAGOYAかいごネット https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/kaigo/top/