(本記事作成日:2021年10月25日)
遺言書の種類として、これまでの記事で「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2種類をご紹介してきました。
今回は、3つめの「秘密証書遺言」についてご紹介していきます。
★今回の記事がオススメの方
・遺言書を書きたいが、内容を誰にも知られたくない方
★過去記事
・「自筆証書遺言」について知りたい
→ 書いた遺言書が無効に!?必ず守るべき自筆証書遺言作成ルールがあります!
・「公正証書遺言」について知りたい
→ 無効の心配が無い!トラブル防止にも役立つ「公正証書遺言」の作成流れについて
秘密証書遺言とは
秘密証書遺言とは、遺言書の内容を誰にも見せずに秘密にした状態で、公証人に、遺言書の存在のみを証明してもらう遺言書のことです。
公証人とは、裁判官などの経験のある法律の専門家で、法務大臣によって任命された公務員のことです。
公証人は、公証役場におり、秘密証書遺言は公証役場にて作成する必要があります。
この点は、「公正証書遺言」と同じ流れとなりますが、どのように違うかを他の遺言書の種類と比較しながらご紹介致します。
秘密証書遺言のメリット・デメリット
秘密証書遺言のメリット
1.遺言書の内容を秘密にできる
この点が、秘密証書遺言最大のメリットと言えます。
秘密証書遺言を作成する際、作成者本人以外にその内容を伝える必要がありません。
作成の具体的な流れは後述致しますが、秘密証書遺言を作成する際には、公証役場にて公証人・証人立ち会いのもと、遺言書の提出を行いますが、その場で内容は公開されません。
公正証書遺言の場合も、公証役場にて公証人・証人立ち会いのもと、作成する必要があります。
公正証書遺言の場合には、遺言書の内容を公証人および証人に対して公開しなければなりません。
遺言書の内容は秘密にされますが、その存在は公証人および証人に知られることになります。
自筆証書遺言のように、遺言書の存在があることに気づかれない、という事態は避けることができます。
2.偽造・改ざん防止になる
秘密証書遺言は作成後に自分で封筒に入れ、封をした部分に、遺言書を作成した際に押印した印鑑で押印します。
また、公証役場にて、遺言者および証人が署名捺印を行います。
そのため、封が開けられたり、開いた形跡がある場合には遺言書として無効になってしまいます。
そのため、公正証書遺言と同じく、偽造・改ざんされるという事態を防ぐことが出来ます。
3.本文をパソコンで作成できる
秘密証書遺言の場合、パソコンを使用して内容を作成することができます。
また、代筆で他者に作成を依頼することができます。
ただし、署名のみ直筆で作成する必要があります。
また、押印も必要になります。
秘密証書遺言のデメリット
1.不備による無効の恐れがある
秘密証書遺言作成の際には、その内容を誰にも見られることがありません。
そのため、内容の不備があったとしても誰にも気づかれることがありません。
内容が確認されるのは、遺言者が亡くなった後になるので、訂正ができず、不備があった場合には無効となってしまいます。
2.費用が必要
秘密証書遺言も、公証役場にて作成されるため、作成時に手数料が発生します。
金額としては、11,000円必要となります。
公正証書遺言作成に比べて費用が抑えられますが、手数料が不要な自筆証書遺言に比べると費用がかかってきてしまいます。
3.証人が必要
秘密証書遺言を公証役場にて作成する際、必ず証人が2名立ち会う必要があります。
以下に該当する人は証人になることができませんのでご注意下さい。
①相続人になる人
②受遺者(遺言書によって財産を受け取る人)
③ ①・②の配偶者・直系血族(父母・祖父母・子などのように、縦の繋がりで結ばれ、血の繋がりがある人)
④未成年者
⑤公証役場の関係者
⑥公証人の配偶者・4親等内の親族
証人は遺言者側で見つけてくる必要がありますが、上記のように、一定の関係者は証人になれません。
そのため、ご自身で見つけてくることは容易ではありません。
公証役場にて証人を用意してもらうこともできますが、証人一人につき一定の手数料が必要になります。
4.紛失・焼失の恐れがある
秘密証書遺言は公証役場で保管されません。
遺言者ご自身で保管する必要があります。
保管場所を誰にも知らせていない場合や、ご自身で保管した場所を忘れてしまい、せっかく作成した遺言書が発見されない可能性もあります。
また、ご自宅が自然災害に遭われ、焼失等により使用できなくなる危険もあります。
保管に不安がある場合には、遺言執行者(遺言書の内容を実行する人)や弁護士等の専門家に預けるなどの対策をしましょう。
5.家庭裁判所の検認が必要
自筆証書遺言と同様に、遺言者が亡くなった後、秘密証書遺言の内容を家庭裁判所で確認されます。
そのため、相続人等が勝手に中身を開封することは許されず、開封した場合には過料を科せられる可能性があります。
検認には一定の時間が必要になりますので、これもデメリットと考えられます。
秘密証書遺言作成までの流れ
大まかな流れは公正証書遺言と同じです。
以下に具体的な流れをお伝えします。
1.相続人の特定、各相続人の相続割合・遺留分の把握
自筆証書遺言・公正証書遺言作成と同じく、まずは相続人の特定があります。
法律により、誰が相続人かが決まっています。
また、相続人ごとに、遺産がどのような割合で振り分けられるか(法定相続分)も決まっています。
まずは、「誰に」「どのくらいの割合」遺産が渡るのか把握しましょう。
遺言書によって財産の振り分け方を指定する際に注意すべきことがあります。
それは、「遺留分」と言うものです。
これは、法律で守られた、相続人ごとの最低相続割合のことを言います。
そのため、この遺留分を超えて遺産の振り分けをしようとしても、それは法律上認められないことになります。
例えば、自分の財産を全額、家族以外の第三者に渡そうと考えても、配偶者や子供などの家族がいる場合には、遺留分に相当する金額は家族に渡り、残りの金額が第三者に渡るようになります。
遺言書を作成する場合には、この「遺留分」を考慮して作成することで、相続人間でのトラブルを防止することができます。
2.財産目録作成
前述したように、財産目録とは、 遺言者の所有する財産をまとめた一覧表のことです。
財産目録を作ることで、財産の全体を把握することができ、それを元に相続割合を決めることができます。
財産目録はパソコンで作成することができます。
財産目録の作成は義務ではありませんが、作成しておくことで遺言書の作成がスムーズに進みますのでオススメです。
3.財産の振り分け方を決める
相続人と財産が特定できたら、遺言者の意思に基づき、「誰に」「何を」「どのくらい」渡すのか、振り分け方を考えます。
前述したように、これらを決める際には「遺留分」に配慮し、それを超えない範囲で割合を指定して下さい。
4.秘密証書遺言書の作成
遺言者が決めた財産の振り分け方に基づき、遺言書を作成していきます。
作成した遺言書には必ず、氏名の自署と押印が必要です。
押印する印鑑は実印である必要はありません。
作成した遺言書は封筒に入れ、封印します。
封印する際の印鑑は、遺言書に押印した印鑑と同じものを使用して下さい。
5.必要書類収集
遺言者の身分証明書など、一定の書類が必要になります。
何の書類が必要になるかは、事前に公証役場に必ず確認するようにしましょう。
6.公証役場に秘密証書遺言を持参
完成した秘密証書遺言を公証役場に持参します。
公証役場では、遺言者・公証人・証人二人の立会いのもと、秘密証書遺言の入った封書を提出します。
遺言者は、この遺言書が、自分のものであることの宣言と、氏名・住所を申述します。
遺言者本人が公証役場に出向くことが難しい場合には、指定した場所に公証人が出向くこともできます。
ただしこの場合には、余分に費用がかかりますのでご注意ください。
作成に必要な手数料は、作成当日に現金にて支払います。
秘密証書遺言の存在を証明する書面に、遺言者・公証人・証人2名押印し、手続きが完了します。
提出した封書は公証役場では保管されませんので、遺言者が持ち帰り、自身で保管します。
まとめ
・秘密証書遺言は、遺言書の内容を公開する必要が無いため、中身を秘密にしたい方に適している。
・不備による無効の可能性があるため、作成する場合には書き方に注意が必要。
費用・手間がかかり、また、不備の可能性があることから、利用する人は非常に少ない秘密証書遺言。
内容を絶対に知られたくないという方に適してはいますが、作成時にはくれぐれも書き方に注意して下さい。
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参考
裁判所 https://www.courts.go.jp/index.html
日本公証人連合会 https://www.koshonin.gr.jp/
法務省 https://www.moj.go.jp/index.html