(本記事作成日:2021年11月4日)
相続発生によって、これまで良好であった家族関係が悪化するケースがあります。
法律上、被相続人(亡くなった方)の財産を受け取る人(相続人)と割合(法定相続分)が決められています。
しかし、生前に被相続人とどのような関わり方をしてきたかで、財産配分の割合に対して不満を持つ方が出てきます。
例えば、「被相続人の介護をしてきた子供が、全く介護に関わらなかった兄弟姉妹に財産が平等に配分されることに不満を持つ」ケースなどです。
相続が発生するタイミングで、それまで溜めていた不満が一気に吹き出てしまい、これが相続トラブルに発展することになります。
いわゆる「争続」と言われるのは、このような場面です。
今回ご紹介する「遺産分割協議」は、相続人同士での財産の分け方について話し合う場であり、まさにこの争続が発生するタイミングになります。
この記事を読むことで、予め想定されるトラブルに対して、どのような対策が取れるかが分かります。
大事な家族関係を壊さず、平穏な日々が送れるよう、今回の記事が助けになれば幸いです。
★今回の記事がオススメの人
・相続によって家族関係を悪化させたくないと考える人
・自分が相続トラブルに巻き込まれるか心配な人
遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、相続人同士で、被相続人(亡くなった方)の遺産の分け方を話し合うことを言います。
被相続人が生前に遺言書を作成した場合には、遺言書の内容に沿って財産が分けられることになります。
しかし、遺言書が存在しない場合には、遺産分割協議をして、遺産を分けることになります。
遺産分割協議は相続人全員が同意しない限り成立しないため、意見が対立し、合意に至らないケースは多々あります。
相続トラブルの現状
次に、全国で相続トラブルがどれだけ発生しているか見ていきます。
裁判所の統計「令和2年司法統計年報概要版(家事編)」によると、令和2年の遺産分割事件(認容・調停成立)は5,807件ありました。
このうち、遺産総額別に見ると、件数が多い順に以下のようになります。
遺産総額 事件数(割合)
・1,000万円超5,000万円以下 2,492件(42.9%)
・1,000万円以下 2,017件(34.7%)
・5,000万円超1億円以下 655件(11.2%)
・1億円超5億円以下 369件(6.3%)
・5億円超 37件(0.6%)
・算定不能・不詳 237件(4%)
上記の数字が示しているように、遺産を巡るトラブルは、遺産総額5,000万円以下の家庭で75%以上発生しているのです。
また、遺産総額を1,000万円以下に限定したとしても、その割合は約35%と、多くを占めています。
このように見ると、遺産相続を巡るトラブルは誰にとっても起こりうるものであると言えます。
相続トラブルが想定されるケース
遺産の多くが不動産
不動産は現金と違い、簡単に分割することが出来ません。
そのため、基本的には1人の相続人が単独で取得することになります(共有して相続することも可能)。
この場合、複数の相続人が同じ不動産の取得を望んでいる場合、誰が相続するかで争いになることが考えられます。
また、単独で不動産を所得する相続人が決定した場合、それにより本来相続する金額よりも多くを相続した場合、他の相続人に対しては現金などで補填することになります(「代償分割」と言います)。
例えば、遺産として4,000万円の不動産と1,000万円の預貯金があり、相続人が子供2人とします。
この場合、子供2人で2,500万円ずつの相続となります。
仮に一方の子供が4,000万円の不動産を単独で相続する場合、1,500万円多く相続することになります。
そのため、1,500万円をもう一方の子供に補填する必要がありますが、支払うことが出来ない場合にはトラブルになる可能性があります。
さらに、不動産の評価額をどの基準で決めるかによって、相続金額が変わるため、この点も争いの原因になります。
遺産分割協議の場面では、不動産の評価額は実際の取引価格(実勢価格)の8割程度になるように決定されています。
しかし、相続人としては、不動産の評価額が高いほど受け取る金額が上がるため、「実勢価格」を基準とすべきであると主張するケースが考えられます。
こうなると、不動産を単独で取得したい相続人と、それ以外の相続人とで、不動産評価額に対する考え方が変わるため、争いに発展することが考えられます。
相続人が多い
相続人が多い場合、相続人ごとに考え方が違い、トラブルになる可能性があります。
被相続人とのそれまでの関わり方によって、「自分の方が多く貰う権利がある!」「あの人は全く連絡もしないで相続の時だけ来るなんて都合が良すぎる!」など、様々な意見が出てきます。
遺産分割協議を行う場合、相続人全員が協議結果に同意する必要がありますが、相続人が多いと容易ではありません。
相続人同士、疎遠で互いのことをほとんど知らない場合や、元々関係が良くない場合などは、揉めることが考えられます。
被相続人を介護した人、しなかった人がいる
被相続人が生前、介護が必要であった場合、誰が介護をしていたかで、相続の場面でトラブルになるケースがあります。
例えば、被相続人に子供が二人おり、一方の子供が被相続人の介護をしていた場合です。
介護していた側がより多く財産を貰いたいと考えた場合、財産割合で意見がぶつかるケースがあります。
法律上、「寄与分」というものがあり、被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合には、他の相続人よりも遺産を多く得られる制度のことです。
被相続人を介護してきた相続人がいる場合には、この寄与分が認められる場合、他の相続人よりも多くの遺産を得ることが可能になります。
しかし、寄与分が認められるためには条件があり、食事の世話をしていた、病院の送り迎えをしていたという程度では認められない可能性が高いです。
また、寄与分には明確な基準があるわけではないため、必ずしも寄与分を受け取る相続人が納得できる金額になるとは限りません。
相続トラブル対策方法
遺言書の作成
予め遺言書の作成をすることで、相続人間のトラブル予防が期待できます。
遺言書を作成する場合、最初に相続人と相続財産(遺産)の特定が行われます。
このとき、遺言者が、遺留分(相続人に最低保障されている相続割合。詳しくは「遺言書の通りにはならない!?「遺留分」の内容と権利者について」をご覧ください)や寄与分に配慮して作成することで、相続人同士での争いを避けることが可能になります。
遺言書作成に関して詳しくは、以下の過去記事をご覧下さい。
・「自筆証書遺言」について知りたい
→ 書いた遺言書が無効に!?必ず守るべき自筆証書遺言作成ルールがあります!
・「公正証書遺言」について知りたい
→ 無効の心配が無い!トラブル防止にも役立つ「公正証書遺言」の作成流れについて
・「秘密証書遺言」について知りたい
→ 遺言書の中身を秘密にしたい!秘密証書遺言のメリット・デメリットと作成流れについて
不動産売却
不動産が遺産の大部分を占めている場合には、相続の場面でどのように分けるかが問題となります。
そのため、相続になる前に、事前に不動産を処分することも有効な手段となります。
不動産を売却し、現金化することで、遺産を分けることが容易になり、争いを避けることが期待できます。
また、不動産の売却には時間がかかることが予想されるため、相続後に相続人が行う場合には遺産の受け取りが遅くなることも考えられます。
まとめ
・相続人同士で、被相続人(亡くなった方)の遺産の分け方を話し合うことを言います。
・相続トラブルは、遺産総額5,000万円以下で75%以上を占めている。
・相続トラブルになるケースは、遺産に不動産が多い場合、相続人が多い場合、被相続人が要介護状態であった場合が考えられる
・解決策として、遺言書作成、不動産売却が挙げられる
相続トラブルは決して、一部の富裕層だけの問題ではなく、どのような家庭でも起こりうる問題です。
相続がきっかけで親族が絶縁関係になる可能性があります。
事前に対策を講じることで、親族間の関係を守ることが出来ます。
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参考
裁判所 https://www.courts.go.jp/index.html
法務省 https://www.moj.go.jp/index.html