(本記事作成日:2021年11月8日)
相続が発生した場合、遺言書がある場合には、遺言書の内容に従い相続財産が分けられることになります。
しかし、遺言書が存在しない場合には、誰が相続人となるか、そして、相続財産として何があるかを調査する必要があります。
その後、遺産分割協議を行い、誰がどの財産をどの程度相続するかを話し合い、決定することになります。

しかし、協議の場で、全ての相続財産が明らかにおらず、後々、新た相続財産が発見されたような場合には、相続人同士で争いの元になります。
そうならないためにも、事前にしっかりと財産調査を行うことが重要になります。

今回の記事では、相続財産について、具体的にはどのようなものが相続財産となるか、また、相続財産の調べ方についてお伝えしていきます。

★今回の記事がオススメな方
・自分の保有する財産の明細が分からない方
・親の財産を把握していない子供世代の方
・遺言書の作成を検討している方

相続財産に含まれるもの

相続財産として、財産調査の対象となるものとして、以下のようなものがあります。

プラスの財産
・不動産
・現金
・預貯金
・有価証券(株式・投資信託など)
・動産(自動車・貴金属・美術品など)
・その他

マイナスの財産
・借金
・税金(未払いの所得税・住民税など)
・その他(未払いの家賃・医療費など)

上記の通り、相続財産には不動産や現金などのようなプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も含まれています。
これらのマイナスの財産の存在を知らずに相続をしてしまった場合、知らぬ間に借金を背負うことになる可能性もあります。
このような事態を防ぐためにも、予め相続財産を明確にしておく必要があります。

相続財産の調べ方

主な相続財産の種類ごとに、調べ方についてお伝えしていきます。

不動産

不動産の有無の調べ方
保有する不動産が実家だけの場合には難しいことはありません。
しかし、自宅以外に田んぼや畑を保有している可能性がある場合、注意が必要です。

具体的な調べ方については、「固定資産税納付書」が手掛かりになります。
これは、対象の不動産の所在する各市町村から毎年4月頃に発送され、1月1日時点の所有者に対して届くものです。
この書類には、その人が所有する各市町村の不動産情報が記載されています。

ただし、この書類だけでは、その方の所有する不動産全てが把握できません。
複数の共有名義になっている場合や、固定資産税が課税される評価額に達していない場合には固定資産税納付書に記載されないためです。
そのため、固定資産税納付書とは別に、各市町村で「名寄帳」を取得する必要があります。
名寄帳とは、その方が各市町村で所有する全ての不動産が記載された書類になります。
ただし、ここでも注意点があります。
名寄帳は、申請した市町村に所在する、申請者名義の不動産しか記載されません。
そのため、他の市町村に不動産が存在する可能性がある場合には、その市町村でも名寄帳を取得する必要があります。
結婚や引っ越しで本籍地や住所変更をした方は、前の本籍地・住所地に不動産が存在する可能性があるため、そこも調べる必要があります。

不動産の権利関係の調べ方
名寄帳により、被相続人が所有していた不動産であることが判明したら、次にその不動産に関する権利関係を調べます。
相続開始時点で被相続人が所有権を持っていたかどうか、確認する必要があります。
権利関係は、法務局にて「登記簿謄本(登記事項証明書)」を取得することで確認できます。
調べたい不動産の住所が分かれば、誰でも法務局で調べることが出来ます。

不動産の価格の調べ方
不動産の評価額については、様々な基準があります。
主な基準は以下のものがあります。

・実勢価格(時価)
  → 実際に不動産を売却した場合にいくらになるかを想定して算出する価格になります。
    不動産取引で利用される評価方法で、不動産業者や不動産鑑定士に依頼することで算出
    できます。
    実勢価格が、最も高く不動産を評価することが出来る方法になります。
・公示価格
  → 国土交通省が不動産鑑定士の評価額を参考に、地価公示法に基づいて算出している価格
    です。
    毎年1月1日時点の全国にある標準値の価格から算出されます。
    公示価格は、実勢価格の90%が目安とされ、公共事業用地の取得価格を算出する規準
    となります。
・基準地価
  → 公示価格を補うために各都道府県が算出している価格になります。
    公示価格で算出されないエリアも含まれ、毎年7月1日時点での評価額が公表されます。
・路線価(相続税路線価)
  → 相続税や贈与税を計算する際に基準となる価格です。
    全国の道路ごとに路線価が設定されており、実勢価格や公示価格を加味して算出されます。
    毎年1月1日時点での評価額を国税庁が公表します。
    実勢価格の70%、公示価格の80%を目安に、市街地の道路には路線価が設定されています。
    郊外や地方の場合、路線価が定められていないエリアもあります。
    相続税評価額を算出する際は、この路線価を利用した路線価方式と、路線価が定められて
    いない場合に利用する倍率方式のどちらかで算出することになります。
・固定資産税評価額
  → 固定資産税や都市計画税などの税金を計算する際の基準となる評価額です。
    各市町村の担当者が各不動産を確認し、総務大臣が定めた固定資産評価基準をもとに
    評価額を算出します。
    評価額は3年に一度見直され、1月1日時点での評価額が採用されます。
    価格は、実勢価格の60%、公示価格の70%が目安となります。

相続人同士で遺産の分け方を話し合う遺産分割協議の場では、各相続人が納得できれば、どの基準を採用しても構いません。
遺産分割協議の場面では、実勢価格(時価)を採用することが一般的になっています。
しかし、実勢価格は不動産会社で価格が異なるため、複数の不動産会社に査定を依頼することをおすすめします。

預貯金

預貯金の有無の調べ方
被相続人も預金通帳があれば、そこから残高を調べることが出来ます。
通帳が無い場合、被相続人の預金口座に関しては、相続人であれば書類の開示を受けることができます。
銀行と店名が特定されていれば、現在の残高や、過去の取引履歴を知ることができます。
銀行口座が分からない場合には、金融機関の「全店照会」をすることで、同一の金融機関であれば、他の支店に口座があるかを調べることができます。

預貯金の価格の調べ方
預貯金については、以下の基準日で価格が決まります。
以下の基準日での金融機関の発行する残高証明書の金額が評価額になります。

・普通預金 → 相続発生日の残高
・定期預金 → 相続発生日の残高+利息(源泉徴収額除く)

有価証券

有価証券の有無の調べ方
有価証券については、被相続人宛ての郵便物から調べることができます。
証券会社を通じて購入している場合には、証券会社からの郵便物によって、その証券会社に口座があることが考えられます。
どこの証券会社のものがあるか、そもそも保有しているかどうかが知りたい、という場合には、「株式会社証券保管振替機構」へ開示請求を行うことで、確認か可能です。

有価証券の価格の調べ方
上場株式に関しては、被相続人が亡くなった日(相続発生日)の終値が評価額となります。
終値に関しては、以下の4つの中で最も低い金額で評価することになります。

・相続が発生した日の最終価格
・相続が発生した月の最終価格の平均額
・相続が発生した月の前月の最終価格の平均額
・相続が発生した月の前々月の最終価格の平均額

投資信託については、相続発生日の価格が評価額となります。

借金

借金の有無の調べ方
借金については、種類別に調べ方が異なります。

1.消費者向けローン(消費者金融、クレジットカード、金融機関からの借り入れなど)
これらは、信用情報機関への情報開示によって把握することが出来ます。
信用情報機関としては以下の3つがありますので、全てに対して情報開示請求すると良いでしょう。

株式会社日本信用情報機構(JICC)
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
全国銀行個人信用情報センター(KSC)

2.個人からの借金、税金・公共料金滞納
これらは信用情報に掲載されないため、上記以外の方法により調べることになります。
調べ方は以下の方法があります。

・自宅内に書類がないか
・郵便物が届いていないか
・電話の履歴が残っていないか

まとめ

・相続財産にはプラスとマイナスの財産がある。
・借金や税金・公共料金の滞納などのマイナス財産も相続の対象になる。
・相続財産ごとに調べ方が異なるため、注意が必要。

相続後に借金があることが判明してトラブルになることで、相続人同士の関係が悪化してしまう可能性があります。
そうならないためにも、予め相続財産を洗い出しておくことは大変重要です。
ですが、被相続人になられる方ご自身で全て行うことは大変労力が必要です。
また、将来の相続人になられる方も、仕事や家事で時間が無い場合には大変難しい作業になります。

相続財産把握等、相続に関してお悩みの方は、名古屋市熱田区の合同会社SBNにご相談下さい。
SBN税理士法人のグループであり、グループ全体で課題解決に向けて取組んでいきます。
初回無料にてご相談頂けます。
お気軽にご相談下さい。

参考
国税庁 https://www.nta.go.jp/
株式会社日本信用情報機構 https://www.jicc.co.jp/
株式会社シー・アイ・シー https://www.cic.co.jp/
全国銀行個人信用情報センター https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/about/