人生の中で一番高価な買い物というと、皆さんは何を思い浮かべますか。

多くの方が「家(自宅)」と考えるのではないでしょうか。では、二番目は何でしょう?車?高級時計?実は「保険」といわれています。

生命保険文化センターの調べによると、1世帯あたりの年間払込保険料(個人年金保険の保険料を含む)は平均38.2万円となっています(出典:生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/令和元年度)。

単純計算ですが、仮に30~80歳まで加入したとすると、年間38.2万×50年=1910万円。

かなり高額ですよね。

それにも関わらず、加入当時のままで内容を見直さず、そのままの状態になっている方が多くいらっしゃるのが現状です。

老後になると、家族構成の変化(子供の独立など)・収入の変化(定年を迎え、収入源が年金となることによる収入減)により、必要になる保障内容が異なってきます。

一度見直しを行い、不要な保険の解約をすることで、老後資金・介護資金の充てにすることが可能になります。

また、不足している保障が有る場合には、新たに加入をすることで、老後のリスクに備えることも出来ます。

本日は、老後にやるべき保険見直しの考え方についてお伝えしていきます。

保険を見直すときの3つのポイント

今の自分にどのような保険が必要かについては、次の3つのポイントを踏まえて考えて下さい。
それは、①目的、②期間、③金額です。

以下に一つずつ詳しく見ていきます。

①目的

目的とは、「どのようなリスクに備えるため保険なのか」ということで、
具体的には次のようなものが有ります。

1.死亡リスク

万が一自分が亡くなってしまった場合、遺された家族にどれだけのお金があれば安心でしょうか。

現在の貯金、家族の就労状況(収入)、今後の生活費の予測から総合的に判断する必要があります。

その結果、今あるお金で充分であれば、保険は不要ということになります。

後述する「遺族年金」も考慮し、本当に今の自分や家族にとって必要な保険かどうか、判断しましょう。

2.入院リスク

これまでは健康で入院をしたことが一度も無い、保険を使ったことがない方も多くいらっしゃいます。

しかし、高齢になるにつれ、誰しもが体に不安を抱え、入院するリスクは高まります。

厚生労働省のデータでは、30~34歳の入院率と比べ、60~64歳は3.4倍、70~74歳は5.8倍にもなります(出典:厚生労働省 平成29年「患者調査」)。

入院や手術を受けた際の医療費については国の保険(健康保険や国民健康保険)がありますが、一定割合の自己負担額があり、民間の保険に加入していない場合は自分で払う必要があります。

また、民間の保険に加入していたとしても、保険金の支給条件を満たさないために保険金が下りない、という事態も起こりえます。

具体例としては、「5日以上の入院」が条件となっているため5日未満の入院は対象外となるケースや、「入院中の手術」のみが対象のため日帰り手術は対象外となるケースがあります。

このような自体にならない為にも、自身の加入している保険の内容はきちんと把握しておきましょう。不安な場合は、加入している保険会社の問い合わせるか、お近くの保険販売店に確認してみると良いでしょう。

3.介護リスク

人生100年時代と言われる超高齢社会において深刻化しているのが介護の問題です。

厚生労働省の調べでは、2018年度の要介護(要支援)認定者数は約658万人となりました。公的介護保険制度がスタートした2000年以降毎年その数は増えており、2000年と比べ2018年の認定者数は約2.6倍となっています。要介護状態になる原因は様々ですが、一番は認知症となっており、次いで脳血管疾患・高齢による衰弱・転倒骨折の順となります(出典:厚生労働省 2019年「国民生活基礎調査」)。
要介護状態になった場合、一人での生活が難しくなり、家族や介護の専門家の力を借りて生活することになります。
では、どのくらい介護を行う必要があるかというと、
介護を行う期間は平均54.5カ月(4年7カ月)になりました。

また、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計が平均69万円、月々の費用が平均7.8万円となっています。そして、介護費用の総額(月々の費用平均×介護期間平均)は、7.8万円×54.5ヶ月=約425万となります。

一時費用を合計すると、約500万円ものお金が介護に必要となる計算になります。

皆様の中で「老後破産」という言葉を聞いたことがある方がいると思いますが、この原因になり得るのが、突然の介護費用の出費なのです。

介護も想定した資産設計はこれからの時代、ますます重要になっていきます。

4.長生きリスク

厚生労働省によると、2020年の日本人の平均寿命が女性が87.74歳、男性が81.64歳となり、過去最高を更新したことが伝えられました(厚生労働省 令和2年「簡易生命表」)。

過去最高を更新するのは女性が8年連続、男性が9年連続となり、医療技術の発達や健康意識の高まりにより今後も上昇を続けることが予想されます。
これはつまり、現役を引退し、年金が主な収入源となる老後の生活が長くなることを意味します。

そのため、定年などで現役を引退する際には、その後の収支状況を把握しておかないと、いずれ貯金が底をつき、年金だけでの生活が苦しくなる状況に陥る可能性があります。

資金計画を早く設計し、生活資金が不足する見通しであれば、今からでも対策をすることがとても大切になります。

②期間

保険に加入する目的が定まったら、次に理解することは、保険が必要となる期間です。

例えば結婚して子供が生まれた直後に加入した生命保険(加入者が死亡した際に支払われる保険)であれば、子供が独立した後は不要と考えられます。

本来であれば、加入時に期間を設定し、子供が独立するタイミングで保険期間が満了する内容になっているのが望ましいのですが、そうでない場合には、気づいた段階で早急に対応することで、無駄な保険料を払わなくて済みます。

一方、入院や手術の際に有効な「医療保険」であれば、年齢を重ねるごとに必要性が高まるため、出来れば一生涯保障されるタイプが良いと考えられます。

しかし中には、一定期間(例えば80歳)しか保障されないものもあり、決められた期間を1日でも超えたら一切保障されないものもあります。

保障が切れても入り直せば良いと考える方もいらっしゃいますが、おすすめしません。なぜなら、保険は年齢が高くなるほど月々の保険料が高くなるからです。

また、加入時には保険会社の審査があり、健康上によっては加入を断られる場合も有ります。

なるべく若い内に保険に入っておいた方が良いと言われるのはこのような理由からです。

自分や家族にとって保険がいつまで必要で、また、既に加入済みの方であれば、必要な期間保証されるものか否か、必ず確認するようにしましょう。

③金額

最後に、どれだけのお金が保険から支払われれば安心か、考えていきましょう。

既に老後の生活を送られているのであれば、まずは現在の生活における収支を把握しましょう。

その上で、①目的でお話ししたリスクが現実になったときに、収支がどのように変化するかを考えることで、保険で賄うべきか否かが判断できます。その際に必ず抑えておくべき事は、「国の保険(公的保険)」です。

リスクが現実になった際にはまず、国の保険が皆様の生活を守ってくれます。ここでは、特に知っておくべき2つの制度についてお話しします。

1.遺族年金

公的年金(国民年金や厚生年金)に加入している方は、加入者が亡くなった際に家族に遺族年金が支払われます。

国民年金からは「遺族基礎年金」、厚生年金からは「遺族厚生年金」が支払われますが、遺族基礎年金は、18歳未満の子供がいる場合にしか支給されないため、老後の生活を考えた場合は、当てはまらないケースが多いと思います。そのため、ここでは遺族厚生年金について話します。

遺族厚生年金とは、厚生年金に加入していた方がなくなった場合に遺族に支払われるお金のことです。受け取れる方は、配偶者(妻または55歳以上の夫)となり、配偶者がいない場合には父母・孫・祖父母の順で受け取れます(年齢等制限あり。また、18歳未満の子供がいる場合には配偶者とともに第1優先で受け取れます)。

実際に貰える金額は、現在年金を受給している方であれば、受給金額の内、報酬比例部分(厚生年金部分)の3/4となります。この金額を踏まえて、夫または妻が亡くなった後の生活費が、遺された家族の年金・貯金で賄えるか考える必要があります。

2.高額療養費制度

病院を受診した際、保険証を出すことで、窓口で払うお金(自己負担額)が少なくて済むことはご存じだと思いますが、実はこの金額、毎月上限が決まっていることはご存じでしょうか。

例えば、自己負担額が医療費の3割の方の場合、医療費が100万円かかったとしたら、30万円の支払が必要となります。

しかし、高額療養費を使うことで、この金額をさらに減らす事が出来ます。具体的には、その方の収入によって変わりますが、70歳未満で所得210万~600万円の場合、月の上限は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」となります。先程の例で言うと、「80,100円+(医療費1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円」となり約9万円で済むこととになります(70歳以上の場合は計算方法が変わります)。

この金額を払える余裕が有る場合には、保険に加入しないという選択もあるのではないでしょうか。

まとめ

・保険は人生で2番目に高い買い物。早めに見直しを検討しましょう

・保険見直しの3つのポイント①目的、②期間、③金額

・国の保険(公的保険)をしっかり理解しましょう

参考:公益社団法人生命保険文化センター https://www.jili.or.jp/index.html

   厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/index.html

   名古屋市 高額療養費制度について https://www.city.nagoya.jp/index.html

   日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/index.html