エンディングノートという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
これは、自分にもしもの時があった場合に家族や友人など、大切な人に対して自分に関する情報や思いを書き留めておくためのノートです。
似たものとして「遺言書」がありますが、これは、自分が亡くなった後、自分の財産を誰にどのように遺すかを指定するための書面です。
つまり、この中で書かれることは、財産(現金、不動産、株式など)に関してであり、それ以外の情報が書かれることはありません。一方で、エンディングノートに何を書くかは自由です。
それゆえ、何を書けば良いか分からない、何から手をつけたら良いか迷ってしまう、と言うお悩みを抱える方も多くいらっしゃいます。また、そもそも自分は準備する必要があるのかという疑問を持つ方もいらっしゃいますので、今回は、エンディングノートを準備する目的と、どのような内容にすれば良いかをお伝えして行きます。

エンディングノートを準備する目的(必要性)

目的は大きく2つに分かれます。一つ目は、遺される「家族」のため、二つ目は「自分」のためです。次に、それぞれ詳しく見ていきます。

①「家族」のために準備する

自分の両親や祖父母、配偶者などの家族を看取ってきた方であれば経験していると思いますが、家族が亡くなった後には様々な手続きが必要になります。相続手続き、葬儀の手配、病院や介護施設への費用の支払、自宅の公共料金の支払、年金受給停止や健康保険証の返還など、やるべきことが短期間に集中してきます。仮に、亡くなった方の情報が分からない状態だとどうなるでしょうか。必要なものを家の中から探すか、家族がその場で考えて対応しなければならなくなります。大切な方を失い、深い悲しみに暮れている中、そのような対応に迫られることは、家族にとって大きな負担になるでしょう。それを防ぐためにも、予め情報を一つにまとめることが望ましいです。

②「自分」のために準備する

エンディングノートは、人生の「終わり」のためだけでなく、「今」をどう過ごしていくか、どのようにしたらもっと充実した人生を送れるかという、前向きな意味も持っています。これまでの人生を振り返り、どのような出会いがあり、どんな経験をし、そして、今後何をしていきたいかを考えるきっかけとなります。このような前向きな気持ちで取り組むことで、書くことが楽しく感じられると、作成意欲も高まるのではないでしょうか。

エンディングノートに書くべき内容

冒頭でも述べたように、エンディングノートの内容に関して決まりはなく、自由に書くことが出来ます。しかし、いざという時に役に立つ内容でなければならないため、最低限書いておくべき項目があります。具体的には以下の通りです。

①個人情報      氏名・住所・生年月日・本籍地・血液型
②財産 1.預金 金融機関名・支店名・口座の種類・口座番号・名義
これらと同時に、キャッシュカード・通帳・銀行印の保管場所も明記しましょう。
2.不動産 種類(土地・戸建て・アパート・マンション・田畑・山林・その他)・所在地・名義人(共同名義人がいる場合には、その人の氏名・連絡先)・時価(相続時の目安になります)
3.年金 種類(国民年金・厚生年金・共済年金・その他)・基礎年金番号・年金証書番号
      4.保険 保険会社・保険種類(死亡保険・年金保険・医療保険など)・証券番号・契約者・被保険者(保険の対象者)・死亡保険受取人・保険金額
5.株式 証券会社・銘柄・株数・名義人
6.借入金・ローン            借入先・借入金額・返済期限・借入残高・担保・保証人
7.その他 ゴルフ会員権、美術品、貴金属など
③遺言書 遺言書を作成している場合には、保管場所を明記しましょう。
④葬儀 葬儀社名・葬儀の内容・宗教の希望・戒名法名・喪主・遺影写真の保管場所
⑤お墓 寺院霊園名・所在地・連絡先
⑥介護 介護状態になった場合の希望(自宅で過ごしたいか施設に入りたいか
⑦医療 病名の告知を受け

エンディングノート作成時のポイントと注意点

①自由に書きましょう

すでにご説明しましたが、エンディングノートの書き方には決まりはありません。ご自身の思うように作成して頂けます。例えば、文書だけでなく、写真を貼ったり絵を描いたり、自分なりのオリジナルのノートを書き上げて下さい。また、内容は定期的に見直すこともおすすめします。時間が過ぎれば状況が変わり、自分の気持ちにも変化が生じることは充分考えられます。ご自分の誕生日やお正月など、節目となるタイミングで内容を見返すようにすると続けやすいでしょう。

②何から書いても大丈夫

前述したように、書くべき項目は色々とあります。これらの項目以外にも、人それぞれ書いておきたい内容は様々あるかと思います。そうなると、「書くことが多くて大変そう‥」「時間がないし‥」といった考えになる方も多いのではないでしょうか。実際に書き始めても、項目の多さに挫折してしまう方も多く見られます。そんなときは、自分の興味関心がある項目から一つずつ始めて下さい。最初から完璧を目指さず、自分のペースで確実に続けて行くことが、完成への近道です。「急がば回れ」ゆっくり、自分のペースで大丈夫です。

③法的拘束はありません

エンディングノートを遺言書の代わりに書こうと考える方もいると思いますが、一つ注意すべき事があります。それは、自身の財産の分け方に関して記載したとしても、その内容に法的拘束力はない、ということです。つまり、例えそのような内容を記載したとしても、その通りに財産が分けられる保証がないのです。内容を確実に実現させたいのであれば、遺言書の作成が必要になります。遺言書について書かれた記事は、本ブログの「遺言書の必要性と種類教えます」をご覧下さい。エンディングノートは、書いた本人の思いを「伝える」手段として有効ですが、「実現」するかどうかは、それを見た家族に任されている、ということをしっかりと認識しておいて下さい。

④保管場所について

エンディングノートを書き上げたのでもう安心、ということではありません。しっかりとその思いを届けるためには、書いた内容が家族や大切な人の目に触れなければなりません。そのために、エンディングノートの保管場所について、予め伝えておく必要があります。しかし、事前に内容を見られたくない、と考える方もいると思います。その場合には、信頼できる人を一人選び、その方だけに伝えるようにして下さい。

書き始めるタイミング

では、実際に書き始めるにはいつが最適なのでしょうか。答えは「今すぐ」です。前述したように、エンディングノートには多くの書くべき項目があります。少しずつ継続してコツコツ書き上げていくことが大切です。また、作成者の年齢も問いません。最近は、20代・30代の若い世代も終活に関して関心を寄せています。これらの世代は、就職・結婚・出産など、人生の節目を迎えるタイミングが重なっていることや、最近ではコロナウイルスの影響で「死」を身近に感じ、人生の最後について深く考えるきっかけが出来たことなどが理由と考えられています。書店に行くと、お洒落なエンディングノートも発売されており、書くこと自体が楽しくなるような仕組みになっていることも要因かもしれません。

まとめ

①エンディングノートは、遺される「家族」のためだけでなく、今後の人生を有意義に過ごしたいと願う「自分」のためにも大切なものです。

②書くべき内容は自由だが、①個人情報、②財産、③遺言書、④葬儀、⑤お墓、⑥介護、⑦医療については必ず書くようにしましょう。

③保管場所、法的拘束力がないことに注意しましょう。

④作成は「今すぐ」始めましょう。

参考:日本財団遺贈寄付サポートセンター https://izo-kifu.jp/

   特定非営利活動法人エンディングノート普及協会 https://endingnote.or.jp/

   終活カウンセラー協会 https://www.shukatsu-csl.jp/