終活という言葉も浸透し、自分も取り入れてみようと思う方もいらっしゃるかもしれません。終活とは、自身が亡くなったときに備えた準備と共に、これからの人生をより自分らしくいきいき楽しく過ごすための前向きな活動です。
終活と一言で言っても、何から始めれば良いのかとなかなか手がつけられない時は、亡くなった時の準備とこれから先の人生についての2つに分けて考えてみると、自身の中で優先順位を含めた整理ができるかもしれません。
死後の手続きやさまざま判断に困らないようにと、残された家族のことを思い終活に取り組む方も多いでしょう。さまざまな意思表示や財産相続などの準備をしておけると安心です。

人生100年時代と言われる現代、これから先の残された人生も、自分らしい老後を送るためにお金の準備というのはとても大切なことです。そして遺産相続というのは、お金が絡むことから少額でもトラブルを生みやすいという性質があります。
相続させたくない相続人がいたり、財産の配分を自由に決めたいなどの希望がある場合には必ず遺言書を作成しておく必要があるでしょう。

また、今回の記事では遺贈について考えてきたいと思います。
遺贈とは被相続人の希望により、法定相続人以外に遺産の一部や全部をゆずることを指します。法定相続人にも遺贈することはできます。
相手は、自身がお世話になった人などの特定の人物のほか、教育機関や地方自治体などの団体や法人にも遺贈することができます。
遺贈を行うためには、どんな準備が必要なのでしょうか?通常の遺産相続との違いについて考えていきたいと思います。

終活の必要性について

終活の活動というのは、誰しもが避けては通れない自身の最期に向けて、身じたくを整え、葬儀やお墓、遺産についてなどの取り決めを自身で決めて準備を進めておくものです。
これまでの人生を振り返るきっかけにもなり、同時にそこから先の残りの人生をより楽しく充実したものにするための目標づくりにもつながります。
それをしておくことで、残される家族への負担が減り、不必要な揉め事を避けられるというメリットがあります。
昔は葬儀の手配や故人の遺品整理などは家族や親族が協力して行うことがごく自然でしたが、終活を通じて事前に準備をしておくという流れが広まったのには、現代の日本が置かれている社会的背景というのも影響しているかもしれません。少子化や超高齢化社会、核家族化などのほか、社会保障への不安などと言ったといったことから、生前に準備をと考える方が増えているのです。

また、2011年に起きた東日本大震災や今もなお続くコロナ禍も日本人の意識にさまざまな変化をもたらしたといっても過言ではないでしょう。突然訪れた未曾有の事態をきっかけに、人との繋がりの大切さに気づき、お互いを思いやる気持ちを強めた人も多くいました。ボランティア熱が高まったり、人とのつながりの大切さに気づき、結婚して家庭を築きたいという人も増えました。
その一方で、突然やってくる自分や周りの不測の事態や死についても考えるきっかけとなった人も多かったようです。

しかし、終活というのは強制されてできるものでもありません。人それぞれのタイミングで終活を始めるのが大切です。
身近な人を亡くしたから、体調を崩したから、子供がいないから早めに準備をしておきたいなどと、ご自身なりのきっかけとなる出来事があれば、そのタイミングで終活を始めるのも良いかもしれません。

ライフスタイルや家族の在り方などが多様化していることから、終活を通して財産の相続などについてもさまざまな選択肢を検討する人が増えているようです。

遺贈と相続って何が違うの?

遺贈と相続は自分の財産をゆずるという意味ではよく似ていますが、違いはどんなところにあるのでしょうか?

人が亡くなると、その人が生前有していた土地や現金などの財産の権利などは、その人と一定の関係にある人に移ることになります。このことを一般的に「相続」と呼んでいます。一定の関係というは法定相続人のことで、民法で定められた財産を相続できる人、つまり配偶者か血族がそれにあたります。

このように相続は相続人が財産を受けとることを言いますが、「遺贈」の場合は遺書言に記されていれば、相続人でなくても受けとることができるのが特徴です。対象は個人だけでなく、学校や施設、地方自治体など法人でも受けとることができます。
では、遺言書に記すのはすべて遺贈で良いのでは?と思われるかも知れませんが、遺贈と相続の違いは税金にもあります。
たとえば相続人以外の人へ不動産を遺贈する場合、不動産取得税がかかったり、通常の相続における登録免許税よりも高くなるなど、課税の負担が大きくなります。また相続税については、相続、遺贈ともに課税対象ですが、遺贈の場合の相続税は相続の場合より2割高くなるため注意が必要です。
また遺贈により個人ではなく法人が財産を引き継ぐ場合には、相続税ではなく法人税がかかります。

このように相続と遺贈にはおもに税制や手続きに違いが発生してきます。そのため、法定相続人にあたる人には遺言状で「相続させる」と明記をするのが良いでしょう。

遺贈には2種類あります

遺贈には、特定遺贈と包括遺贈の2種類があります。遺贈をされる人や法人のことを受遺者と呼びます。

・特定遺贈とは
特定遺贈とは、指定された財産を対象とした遺贈のことをいいます。たとえば、不動産はAに、現金は法人Bに、というように遺言書に記載をしておきます。
遺言者が死亡すると効力が生じ、遺言書で特定された財産の所有権が対象である受遺者に移ることになります。

・包括遺贈とは
包括遺贈とは、遺産の内容を特定せずに、遺産の全部または割合を指定するにとどまり与える遺贈のことをいいます。包括遺贈の大きな特徴は、包括受遺者は相続人と同じ権利や義務を負うことになります。つまり、遺産の中に負の遺産が含まれている場合、その負債も割合に応じて引き継ぐことになります。
特定遺贈との一番大きな違いはこの点と言えます。一部を包括遺贈された受遺者がいる場合は、相続人と受遺者との間で、遺産分割協議を行う必要があります。

遺贈をするメリット、デメリットとは?

メリット
 ・法定相続人以外の親族やお世話になった人などにもに財産をゆずることができる
 ・個人だけではなく、法人や団体にも遺贈することができる
・生前の自分の思いや共感できる活動をしている団体などに遺贈することで、理想を叶えることができる
 ・受遺者が受け取りたくない場合には、拒否することもできる

デメリット
 ・相続と同じ様に相続税がかかる
 ・法定相続人には、最低限相続できることが法的に保障される「遺留分」という権利が認められているため、包括遺贈により全財産を特定の受遺者に
  贈る場合などは、相続人と受遺者の間でトラブルに発展する可能性がある

基本的に相続では法定相続人にしか財産を配分することができません。しかし遺贈を活用すれば、法定相続人ではない親族にも財産をゆずることが可能です。生前の自身の気持ちを残しておくことで、本当に財産をゆずりたい相手に贈ることができるのです。
また、生前にお世話になった人などを受遺者にすることで、自分の感謝の気持ちを伝えることができます。相続というのは、どうしても揉め事が起こりやすい性質を持っているので、相続にするのか遺贈にするのか、事前に確実に準備を進めておけると安心です。

まとめ

遺贈と相続は一見似ているように思えますが、メリットと共にデメリットもあります。遺贈したいと思うのであれば、自身の死後に受遺者をトラブルに巻き込むリスクをできるだけ減らすことを考え、きっちりと法的に有効な遺言書を作成し準備しておきましょう。
そのためにまずは、遺贈と相続の違いをしっかりと把握し、どちらを選択するのが良いのかを検討をしていけると安心です。

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