終活という言葉が浸透しこれからの人生をより快適に楽しく過ごすためにと、その活動を取り入れる方も増えてきました。ライフスタイルが多様化する現代、老後もさまざまな形で過ごされる方がいらっしゃるでしょう。熟年離婚やおひとりさまという言葉も耳にする機会が増えました。自身にとって一番心地よい生き方を選択したいと思うのは、当たり前のことです。
どんな暮らしの中でも必要不可欠となってくるのが、お金のことです。財産は死後持ってはいけませんし、自分らしいお金の使い方のほか、相続はどうするのかということも考える必要があります。そのために準備を進めておきたいのが、遺言書です。一人暮らしや、独身であっても、遺言書を作成しておくことで残れされた家族の間でのトラブルを回避したり、最期を迎えた後の手続きなどをスムーズに進める助けとなるでしょう。

デジタル化社会となり、スマホやタブレットなどを使いこなす方も増えてきたことと思います。遺言書というのは、それを使いビデオという動画の形で残しておくことは可能なのでしょうか?動画であれば撮り直しも簡単で、自分の気持ちも伝えやすいかもしれません。

今回の記事では、ビデオで準備をしておく遺言書について作成する時の注意点などをご紹介していきたいと思います。

遺言書の必要性について

日本は少子高齢化や核家族化を迎え、ライフスタイルの多様化と共に様々な家族のかたちが増えています。最期まで自分らしい人生をと考える方も多く、終活を通じて人生を振り返ったり、今後のライフプランについて計画を立てる方もいらっしゃるでしょう。しかしおそらくほとんどの方が抱くのは、できるだけ周囲に迷惑をかけずに人生を締めくくりたいという思いではないでしょうか?
活は簡単に言うと、自身の死を意識しそれに向かって活動を進めていくものですが、単に物や資産を整理しておくだけではなく、自身のこれまでの生活を見つめ直し、これから先の人生をより実りあるものにしていくことが大きな目標と言えます。
そのための準備として必要になってくるのが、身の回りの整理や遺産相続の準備、葬儀やお墓の希望を伝えたり準備をしておくことです。

終活を始めるきっかけとして、自身の死後に家族や周囲の人に迷惑をかけないようにという気持ちで取り組まれる方も多くいらっしゃいますが、大切なのはこれから先の人生を、健やかで充実した日々にするための活動だという認識を持つことです。
少しでも不安や心配事を取り除いておくのも、快適なセカンドライフを送るために重要となってきます。多くの高齢者の方が抱く心配事の中には、介護や相続、お葬式やお墓のことなどがあります。それらの準備を終活を通して進めていけると、不安を取り除きよりいきいきとした老後を送る手助けになるかもしれません。

「相続をきっかけに身内同士が財産を奪い合う」こんな悲しい話は実は珍しいことではありません。日本が今直面している、少子高齢社会や将来の経済的な不安というような社会情勢が、その引き金となっているのかもしれません。また核家族化が進み、家族や親戚の付き合いが希薄となり、生前に意思の疎通ができていないような状況もあり得ます。かつては一般的と言えたかもしれない、長男が家と財産を引き継ぐというような暗黙の了解も崩壊していると言えるでしょう。核家族化、おひとりさま、熟年離婚など家族のあり方も多様化し、複雑となっていると言えます。
このような状況であれば、相続がきっかけとなって遺族間で揉めごとが無い方が珍しいなんてことにもなりかねません。

そんな相続問題を未然に防ぐ切り札として準備をしておけると安心なのが、遺言書です。自身できちんと遺言書を作成、準備をしておくことで、財産を巡る不要なトラブルを予防することができるでしょう。

正しい遺言書の作成方法。動画は有効?

実は法的に有効な遺言書というのは細かく法律で定められたルールにのっとって進める必要があり、さまざまな注意が必要です。遺言書には下記の3種類があります。

◉自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、自分自身で作成する遺言です。自筆証書遺言は代筆はNGで、必ず自分自身の字で書く必要があり、パソコンなどで作成されたものも無効となります。その他に日付や押印が必要などのルールが定められています。
自筆証書遺言は思い立った時に、自分一人で書くことができる上、費用も発生しません。そのため気軽に手軽に作成できますが、要件を満たしていないことに気がつけず、遺言書が無効になってしまう恐れがあります。また、遺言書の有無を明らかにしていなかった場合、遺言書自体に気づいてもらえない恐れもあります。

◉公正証書遺言
公証役場にいる公証人によって作成、発行され、保管をされる遺言書です。公証人は法律の専門家が行うため、遺言書の安全性や法的な効力を確実にするという意味では最も安全性が高いと言えます。しかし、作成するには時間や費用が必要と言ったデメリットもあります。

◉秘密証書遺言
遺言書は自分で作成し、公証役場に持ち込み保管してもらう遺言書です。遺言書の内容を誰にも見られたくないという人には、おすすめな遺言書です。ただし、公証役場では遺言書の内容の確認まではしないので、自筆証書遺言と同じく内容に不備があった場合には法的な効力を発揮しない可能性はありますが、遺言書の真贋という意味では本人の遺言書であることの保証が確保されます。

上記に挙げた遺言書というのは、いずれも文書で作成し準備をしておくものです。では、動画や音声などで自分の意思を残した場合、それは遺言書として法的に有効と言えるのでしょうか?
結論から言うと、録音や録画等の方法は、法律で有効と認められる遺言書のいずれにも当てはまりません。つまり、ビデオカメラやスマートフォンなどを使い記録をして残しておいた音声や動画は、遺言としての法的な効力を持ちません。

しかし、法的に効力は無くとも自身の気持ちを動画などのデータとして残しておくことはメリットが無いわけではありません。予想外に親族間で争いが発生した際には、下記のような点から解決に導く糸口となる可能性もあるでしょう。

・遺言書に記載した配分となった経緯を残しておける(遺言書の本文にはそれらは基本的には記載しません)
・遺言書を作成した際に病気や認知症などを患っていた場合、正常な判断ができる状況であったことの証明、偽造ではないことの証明にできる
・遺言書の内容に納得できない相続人が居た場合、被相続人の本当の思いを自身の言葉で伝えることができる

遺言書と共に動画などを残しておくと、相続人の気持ちが納得のいくこと方向へと導く手助けとなるかもしれません。万が一相続人間での争いが起こるかもしれないと感じる時は、遺言書の作成に加えて、録画等のデータも残しておけるとより安心と言えるでしょう。

遺言や相続に関する法律も少しずつ改正されています。2020年からは、自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度が開始しました。世間の声に合わせて、録画や録音などによる遺言が法的に有効となる時も来るかもしれませんね。

まとめ

遺言書にはいくつかの種類がありますが、その全ては文書で作成することを前提としており、動画や音声のデータは法的に有効な遺言書として認められません。しかし文書の遺言書とともに、自身の思いが動画などで残されていることが家族や親族にとって救いとなることもあるでしょう。
終活を通して遺言書を準備しておく際には、遺産相続の中での争いの火種を少しでも取り除いておけると安心ですね。

Good Endingでは、終活のご相談を初め、終活分野での専門家紹介を行っております。
税理士を初めとした専門家チームが、ご相談者様のお悩みを全力でサポートいたします。
終活でお困りの方は、お気軽にご連絡ください。