身寄りが無く、おひとりで過ごされている方の場合、葬儀や納骨の手配に関して誰が行ってくれるか、心配される方も多いのではないでしょうか。

また、自身が亡くなった後には様々な事務手続きが必要になりますが、そこまで気にかけている方は少ないように思います。

おひとり様高齢者の現状

内閣府「令和3年版高齢社会白書(全体版)」によると、65歳以上の一人暮らしの高齢者数は2015年時点で、男性約192万人、女性約400万人となっており、1980年以降一貫して増加傾向にあります。

おひとり様高齢者が増加した背景には、少子高齢化や核家族化の問題があります。

平均寿命は年々伸び、2020年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳となり、女性が8年連続、男性が9年連続過去最高を更新しました。

長寿命化に伴い、配偶者が亡くなった後も長生きをするケースが増加すると同時に、少子化の影響で、頼れる子供がいないというダブルパンチの状況が発生しています。

また、親・子供のそれぞれの価値観やライフスタイルの変化に伴い、子供が結婚後、親元を離れて子供夫婦のみで住み始める、いわゆる核家族化も、おひとりさま高齢者増加に拍車をかけています。

このように、平均寿命の伸びや核家族化などを背景に、おひとり様は増加傾向にあり、今後もその傾向は増えていくことが予想されています。

おひとり様の抱える課題

おひとり様高齢者が抱えるリスクとして、特に言及しておきたいこととしては「死後のリスク」があります。

人が亡くなった場合には様々な手続きが必要になります。

例を挙げると、以下のようなものがあります。

・葬儀・納骨の手配

・死亡届・火葬許可申請書の提出

・健康保険証の返却

・年金受給停止

・入院費・介護施設利用料の清算

・不動産賃貸契約の解約

・遺品整理

・公共サービスの解約

・住民税・固定資産税の納税

・デジタル遺品(SNS・メール等のアカウントや画像など)処分

など

これらは本来、家族などの親族が行うものですが、おひとり様の場合、頼れる親族がいないため、行うことができません。

そのため、予め手続きを依頼できる人を探しておく必要があります。

死後事務委任という解決策

まず、「死後事務」とは、人が亡くなった後に発生する事務手続きを言います。

これらの事務手続きを、自身が亡くなった後に行うよう、第三者に対して委任する契約のことを「死後事務委任」といいます。

これを行うことにより、自分が亡くなった後でも必要な事務手続きが行われるように準備することができます。

本人にとっては非常に安心に繋がります。

死後事務委任の進め方

では、実際にはどのように進めていけば良いのでしょうか。

以下に手順を記載していきます。

1.死後事務委任の依頼先を決める

死後事務委任先は自由に選定することができます。

死後事務委任を受任(引き受ける)する上で、特別な資格は必要ありません。

そのため、仲の良い友人・知人を選任することも可能で、そのような知り合いであれば方もいらっしゃると思います。

しかし、いくら信頼の置ける友人を受任者にして、死後事務委任契約を締結してとしても、その者が死後事務委任の内容に詳しくなければ非常に面倒をかけてしまうことになります。

また、行政に提出する書類も関わってくるため、全く法的知識が無い方の場合、手続き自体が非常に困難になる可能性もあります。

そのため、士業(行政書士・司法書士等)などの専門家に依頼することが適切であると考えています。

2.死後事務委任により委任する範囲を決める

死後事務委任契約は、契約当事者間でその内容を自由に決めることができます。

ただし、反社会的行為や、本人や家族しか行えない医療行為への同意など、一部制限される

ことがありますので注意が必要です。

3.死後事務委任契約書の締結

死後事務委任契約によって依頼する内容は決定したら、契約内容を記載した契約書の作成に進みます。

契約書の作成は、「公正証書」で作成することをオススメしています。

公正証書とは、法務大臣によって任命された公証人が作成する公文書のことをいいます。

公正証書は、契約などの一定の事項を公証人に証明させることにより、法律紛争を未然に防ぎ、法律関係の明確化を図ることを目的としています。

作成された公正証書の原本は公証役場に保管されますので、紛失や改ざんの恐れがありません。

公正証書の作成にあたっては、死後事務委任契約の原案の他にも身分証など、必要書類がありますので、事前に公証役場に確認するようにしましょう。

また、契約に係る費用に関しては、依頼する先や委任する内容によって異なってきます。

受任者が士業等の専門家の場合は、御見積書などで明確に費用提示をして貰えるはずです。

費用面に関してはしっかりと説明を受けて、どのタイミングでいくら必要になるかといった細かいことの関してもしっかりと確認するようにしましょう。

費用としては、依頼先への報酬の他、各種手続き自体にかかる費用も発生します。

例えば、葬儀の手配であれば、葬儀会社に払う葬儀式場の利用料等、遺品整理であれば遺品整理業者への作業料等です。

これらの費用に関しては、生前予約と事前支払の形を取る場合や、亡くなった後に遺産の中から支払う場合とがあります。

どちらの支払方法がとられるか、どのように支払われるか、支払金額等に関しても、依頼先や関係先としっかりと打合せをして、疑問点が無いようにすることが大切です。

死後事務委任契約締結のタイミング

死後事務委任契約締結のタイミングとしては、早ければ早いほうが良いですが、契約締結にあたっては、委任者(死後事務委任を依頼する人)の判断能力が最低限必要とされます。

そのため、認知症等により本人の判断応力が失われたような場合には契約締結が不可能になります。

自分自身の死後のことについて、元気なうちに考えることは気が重く、後回しにしがちになることではありますが、今後の人生を安心して送るためにも、早めの準備が大変重要になります。

思い立ったが吉日。一日でも早く行動を起こしましょう。

まとめ

・おひとり様高齢者は1980年以降一貫して増加傾向にある。その数は2015年時点で、男性約192万人、女性約400万人となっている。

・おひとり様は、自身の死後、各種手続きを行う者がいない、死後事務に関するリスクを負っている。

・死後事務を行う者がいない問題点に関しては、「死後事務委任」という解決策がある。

・死後事務委任契約は、元気で判断能力が有るうちに締結する必要がある

本日は、おひとり様高齢者が抱える問題点や、解決方法である「死後事務委任」に関してお伝えしてきました。

この記事を見て頂けた方は、自身の死後のリスクに関して、何らかの対策をしておきたいという思いをお持ちの方ではないでしょうか。

本文でもお伝え致しましたが、少しでも早いタイミングで、元気なうちに対策を立てておくことが非常に大切になります。

合同会社SBNでは、死後事務委任を含む、終活全般に関してご相談をお受け付けしております。

初回無料でご相談頂けますので、是非一度、まずはお気軽にご相談下さい。

参考
内閣府 https://www.cao.go.jp/
第二東京弁護士会 https://niben.jp/
一般社団法人死後事務委任支援協会 https://sigozimu.com/